国民的議論の火蓋は切られたのか?

日経新聞月曜朝刊の法務面・・・ではなく、1面トップに突如として掲載された「債権法改正」のニュース。

長きにわたってかかわってきた人々にとっては、今さら感が強い一方で、ぼんやりと眺めていた人々にとっては、俄かに現実の課題として降りかかってきた・・・というところもあるのかもしれない。

民法の改正のため法務省の法制審議会が取りまとめる中間試案の内容が17日、明らかになった。債務の支払いが遅延した場合に上乗せする法定利率に変動制を導入。多数との契約に使う約款規定の明文化、短期消滅時効の廃止なども盛り込んだ。2015年の通常国会への改正案の提出を目指し、民法制定から約120年ぶりの抜本改正に向けた議論が加速する見通しだ。」(日本経済新聞2013年2月18日付け朝刊・第1面)

見出しが目に飛び込んできた瞬間に、いくら(元w)経済紙とはいえ、「法定利率」の話がそんなに一大事なのか、という突っ込みが当然のごとく頭をよぎったし、

「債権譲渡禁止特約の効力を制限」

というネタを取り上げるのであれば、第三者対抗要件を原則「債権譲渡登記」に限る甲案だとか、「債務者の承諾」を対抗要件・権利行使要件から外すことの方を何で取り上げないのか?という疑問もわいてくる。

経済界の「自由な経済活動を制限する」という異論は、別に「約款ルール」「不当条項規制」に限った話ではないし*1

「経営者らを除いて連帯保証人制度の廃止を検討する案」

というのが、あくまで「引き続き検討する」というレベルの記載にとどまっている提案であり*2、「ものとする」と表記されている他の論点と比べると、現実に法制化される可能性はかなり低い、ということも今回の記事からは伝わりにくい。

・・・ということで、突っ込みどころは満載なのであるが、間もなくパブコメを迎えようとしている(されど「中間試案」なるものの全貌はいまだ公には姿を表していない)このタイミングで、これまでひっそりと一部の利害関係者&関心の高い一部法曹関係者等の中だけで行われていた債権法改正をめぐる議論を、ようやく「今日の日経のアレ」レベルにまで持ってきたことは、素直に評価してよいのではないだろうか。


かくして、切って落とされた議論の火蓋。

この先、一気に巷での議論が盛り上がることになるのか、それとも慌ただしい年度末を迎える中、数日で多くの読者の頭の中から消え去ってしまうネタにとどまってしまうのかは分からないけれども、個人的にはこの先、“給湯室のネタ”として、になるくらいに、盛り上がってくれればなあ・・・と思うところである。

*1:ただし、この論点が、今回の改正の中で最大の攻防戦が繰り広げられる場所となるであろうことは間違いないので、「約款」を取り上げたチョイス自体は良いと思うのだけど・・・。

*2:http://www.moj.go.jp/content/000106098.pdf、12頁参照。

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