荒れた桜が占う今年のクラシック。

2歳戦で形成されかかった序列が、トライアルレースで見事なまでに覆り、“先が読めない混戦”というのが専らの評判だった今年のクラシック第1戦、桜花賞

そして、そんな前評判どおりに、チューリップ賞勝ち馬の1番人気・クロフネサプライズが最後の直線で失速(4着)。
2番人気の素質馬、レッドオーヴァルこそ追い込んで2着に食い込んだものの、上位人気を形成していたフィリーズレビュー勝ち馬のメイショウマンボアネモネS勝ち馬の馬・クラウンロゼは10着、16着と枕を揃えて討ち死にし*1、勝ったのは、チューリップ賞で辛うじて出走権を拾った感のあったアユサン・・・と、再び序列がひっくり返る結果となった。

冷静に眺めてみると、1着・2着の馬は、このレースでここ数年実績を残しているディープインパクト産駒*2だし、鞍上にいたのは、ここ数年来日している外国人騎手の中では最も信頼できるデムーロ兄弟だから*3、馬券的にはそんなに難しい組み合わせではなかったのかもしれない。

だが、本来、“勝負付け”が済んだ、と評価されても不思議ではないチューリップ賞の「負け組」*4、それも「休み明けで調整途上だった」といったような事情抜きの敗北を喫していた馬たち*5が、これだけ上位を独占する、というのは、やはり異常事態だというべきだろう*6


「今年のクラシックはこうだった」というためには、あと数か月、せめてダービーの結果が出るまでは待たねばならないし、現時点では、同じようにトライアルが荒れている牡馬の傾向を占うことすら難しい。

ただ、今回の1着、3着馬が、日高地区の牧場の生産馬であることに象徴されるように、今年に入ってから、3歳世代に関して、これまでビッグタイトルを席巻してきた社台系の牧場に例年ほどの勢いがないように思えるのも事実。

種牡馬デビューから2年経って、ディープインパクトに集中させていた良血の繁殖牝馬の配合を変えてきた(そして同時にディープの血がより広いエリアの生産牧場に影響を及ぼすようになった)、ということもあるのだろうし、サンデー系の肌馬に合わせる看板種牡馬がなかなか定まらない、という事情もあるのかもしれない*7

世代全体のレベルが底上げされた結果の「混戦」なのか、それとも世代の中心になるべき馬に底力がないがゆえの「混迷」なのか、世代が入り混じる夏以降の季節を迎えるまでは、何とも言えないところではあるのだけれど、今の時点では、「トライアルレースの結果に惑わされることなく、迷ったら騎手と血統で」、「注目すべきは非社台系牧場の生産馬」といったキーフレーズが有効なのかな・・・ととりあえず思うところ。

後は、来週になって、これを忘れて後悔しないことを願うのみである*8

*1:ここ数年を思い返しても、桜のトライアルレースの勝ち馬+前哨戦と位置づけられるフラワーCクイーンCの勝ち馬が、いずれも全く馬券に絡まなかった桜花賞、というのは、ちょっと記憶にない(今年はクイーンC勝ち馬のウキヨノカゼが出走しておらず、フラワーC組も軒並み参戦していない、という事情はあるが)。馬連20万円馬券の大波乱となった5年前の桜花賞でも、3着にはアネモネS馬のソーマジックが突っ込んでいた。

*2:例年この時期までは、比較的出走馬を多く輩出しているディープインパクトにしては珍しく、今年の桜花賞の馬柱に乗ったのはこの2頭だけだったのだが、それで結果を出すのだから、さすが、というほかない。

*3:発走前に、フジテレビの番組で、トライアルレースをそれぞれの持ち馬で制した武豊幸四郎兄弟のワンツー煽りをしていたのだが、今考えれば、それがサインだったのかもしれない(笑)。個人的には、そもそも、アユサンの丸山→デムーロ弟の乗り替わりに、ゴールするまで気づいていなかったのだけど・・・。

*4:桜花賞の上位3頭のチューリップ賞の成績は、3着、7着、8着。

*5:アユサンもプリンセスジャックも、2歳時のG1でローブティサージュクロフネサプライズにかなりの力の差を見せられているし、トライアルレースで付けられた差は、その「序列」に変化がないことをまさに裏付けるもののように思えた。唯一、レッドオーヴァルに関しては、年明けの紅梅Sで、メイショウマンボを豪快な差しで下した実績があったから、前走の敗戦に理屈を付ける余地(出遅れ等)があったのだけれど・・・。

*6:前哨戦で不可解な敗戦を喫した馬が、本番で下がった人気を嘲笑するかのように、雪辱を果たす、というパターンなら、過去にも何度か見られたのだが、何度も後塵を拝した馬がこれだけ浮上する、というパターンはやはり珍しいように思う。

*7:少なくともチチカステナンゴは失敗に終わったようである・・・。その代わりにローエングリン産駒が突如として爆発の気配を見せているが、クラシックの距離まで持つのかどうかは未知数で、正直怪しいところは残る。

*8:下手に覚えていたがゆえに後悔することもあるかもしれないが・・・。

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