そしてまた、この季節。

日経紙にこの特集が載ると、今年も終わりだなぁ・・・という気分になる年末の風物詩が、今年もまた、掲載されている。
そして、今年もまた、突っ込みどころが満載である。

日本経済新聞社が実施した第9回『企業法務・弁護士調査』で、企業の4割以上が国内外でコンプライアンス(法令順守)上のトラブルを抱えていることが分かった。海外拠点や社員のインターネット利用など、目の届きにくい場面で起きる問題に苦慮する企業の姿が浮き彫りになった。」(日本経済新聞2013年12月16日付け朝刊・第17面)

もう、いきなりここで噴いてしまった・・・。

去年のこの調査に関する記事の「法的トラブル 企業の8割」という見出しを見て、「2割も法的トラブルに直面していない会社があるのかよ(笑)」と突っ込んだことを、つい昨日のことのように思い出すのだが*1、今年は、「法的トラブル」よりも、より射程が広いはずの「コンプライアンス上のトラブル」が対象であるにもかかわらず、記事によると「ある」と答えた会社は、「43%」にとどまっている。

いわゆる“コンプライアンス上の問題”は、どんな立派な経営理念をもっていようが、どんなに立派な経営者がいようが、一定規模以上の人間の集団が、日々商いを営んでいる組織においては、必ずどこかで起きるものであり、少なくとも、この調査の「回答企業」として名前が掲載されるような規模の会社で、全く問題が起きていない、ということはありえないだろう、と思う。

ゆえに、端的に言ってしまえば、回答した159社のうち、残りの57%にあたる90社程度の会社は、正直に答えなかった、あるいは、回答した部門に情報が入ってきていなかった、というだけのこと。

にもかかわらず、「法令順守トラブル4割」という見出しを仰々しく付け、あたかも“トラブル”が特殊な出来事であるかのように取り上げる。
このセンスが、自分にはちょっと理解できない・・・。

「弁護士調査」の方に目を向ければ、大手法律事務所の弁護士を対象とした調査でありながら、「2013年に弁護士が注目した案件」の2位に「非嫡出子の法定相続分を巡る最高裁違憲判決」が入っていたり、「消費者裁判手続き特例法」の影響について、「ほとんど影響がない」と答えた弁護士が26%に上るなど、純粋に興味深いデータも散見されるから、これはこれで、特集としての意味はあるのかもしれない。

だが、「企業法務調査」に関する限り、企業の人間に貴重な時間を使わせてアンケート調査を行うのであれば、せめてメインの部分だけは、もう少し意味のある“まとめ”をしてくれても良いのに・・・というため息しか出てこない。

今年が9回目、ということは、おそらく来年は記念すべき「10回目」ということになるのだろうけど、三たびこんな記事になってしまうことがないように、企画を考えた方には、深く深く、今年の反響を踏まえた振り返りをお願いしたいものだと思う。


なお、恒例の「弁護士ランキング」は、今年も企業側の得票数に基づくランキングのみが、新聞紙上に掲載されている*2

<企業法務部門>
1.中村直人(中村・角田・松本)15票
2.太田洋(西村あさひ)9票
3.木目田裕(西村あさひ)9票
4.野村晋右(野村綜合)8票
5.武井一浩(西村あさひ)7票

例年同様、あれあの人は? とか、何でこの人が? とか、そういったことをいろいろと考えてしまう方もいらっしゃるのだろうけど、そもそも、159社が投票して、最多得票が15票、というところに、弁護士を人気投票でランク付けすることの空しさが如実に現れているのではないかなぁ・・・と、毎年のことながら、思わずにはいられない。

そして、No.1の弁護士よりも、Only Oneの弁護士を見つけて、深い信頼関係を築き上げることこそが、法務担当者としての冥利だ、ということを、ここに来てつくづく実感することが多い身としては、空しさ漂うこの企画の中に、見知った顔が出てこないことに、ホッと胸をなでおろしているところである。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20121219/1356023793

*2:弁護士票と合わせたランキングは、Web限定で掲載。

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