マンネリ化した余興とそれに踊らされる人たち?

毎年、法務面にこの特集が載ると、今年も終わりだなぁ、と思う。

日本経済新聞社が実施した第13回「企業法務・弁護士調査」で、回答企業のほぼ半数が、弁護士を社員などとして雇う「インハウス(企業内)弁護士」を3年以内に増やす予定であることが分かった。法務部門自体も、一般社員の増員も含め7割弱の企業が拡充するという。企業統治の重要性の高まりやM&A(合併・買収)の増加などを背景に、法務対応を重視する企業が増えている。」(日本経済新聞2017年12月18日付朝刊・第13面)

ここで「本題」とされているテーマについては、さして言及するようなこともない。

アンケートの対象は主要520社、うち195社が回答、といっても、顔ぶれを見れば、先進的大企業から、なぜここが?というような顔ぶれまで様々。
全体としてみれば、まだまだこれから法務部門を作っていかないといけない、という会社が多いから、そういうところで「7割弱」という数字にはなっているが、これまで法務業界を引っ張ってきた会社の法務部門では、既にピークアウトと言えるような現象が起きているのも、我々は目撃しているわけで、「法務部門が担う役割の増加」という一昔前の分析コメントに大きな意味があるとは到底思えない。

また、「複雑で専門性も高い課題に対処するため、弁護士の知見を生かしたい」から「インハウス弁護士を増やす」という回答をした会社もあるようなのだけど、そんな課題に即戦力で対応できる弁護士なんて、世の中にそうそういるものではない、ということも、企業の現場は学んでいる。

純粋に(法曹以外の)「法学部卒」と言われる人たちが減少していることが、「穴埋めとしての弁護士」の採用数を押し上げている面もあるし、最初の一人、二人は弁護士という「ブランド」に騙されて採用してしまう会社もまだまだ多いのだけど、やがて時が経つにつれ、「弁護士」という資格・肩書きを持っているからといって、全ての人が法律問題にセンス良く対応できるわけではないこと、そして、そんな資格・肩書きは、社会人として仕事をする上での能力を全く担保していない、ということに気付いてしまうので、これも減ることはないにしても爆発的に増えることはもはやないだろう。

結局今年も、期待に違わず“3年遅れの統計”感は、最後まで拭えなかったように思うし、アンケートの対象となった企業の中の人であればこの企画の記事を読んで右往左往することも決してないだろう、と思う*1

そして、その後に来るのは、今年も「企業が選ぶ弁護士ランキング」

<企業法務分野>
1.中村直人(中村・角田・松本)16票
2.太田洋(西村あさひ)13票
3.野村晋右(野村綜合)11票
4.柳田一宏(柳田国際)10票
5.菊地伸(森・濱田松本)9票
5.石綿学(森・濱田松本)9票

若干の順位の変動はあったものの、中村直人弁護士のトップは不動。

先日、『クボリ伝』という本の中に、「人気弁護士ランキング」の表が1995年の第1回からしばらくの間*2の分までずっと掲載されているのを見て、ちょっと懐かしい気持ちになったものだが、それと同時に自分が一番驚いたのは、あの時代、まだ30歳代だった中村弁護士が、ランキングの常連として、既に君臨していた、ということ。

それだけ、「企業法務系弁護士」を取り巻く環境もこの20年の間に変わったのだと思うけど、今、同じ世代であんなに名の売れた弁護士なんて、ほとんどいないわけで、個人的にはちょっと寂しい気持ちになる。
いつかは世代交代が進むのだろうけど、その頃には、この特集も、さらには、「新聞」の存在そのものがどうなっていることやら・・・。

いずれにしても今は、“夜明け前”。
そんなふうに感じさせてくれた結果だったのである。

*1:その意味でこの企画は完全なる「余興」。アンケートの対象にならなかった一部の会社の人が、ワイワイ騒いでいると聞いたが、「本題」にしても、「人気ランキング」にしても、所詮余興にすぎない企画への対応に、忙しい対象企業の人間が無駄な労力を割く、と邪推するのは大いなる勘違いなのである。

*2:要するに久保利弁護士が上位に名を連ねていた期間

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