勝負の舞台は最高裁へ〜自炊代行事業者の果敢な挑戦

先月22日に、知財高裁で控訴審判決が出された「自炊代行」著作権侵害事件。

判決の結論に対して、というよりは、あまりに古風に過ぎる判決内容に対する憤り半分、あきらめ半分で、エントリー*1を書き上げたのが1週間ほど前のことだったのだが、上告期限を目前に控えた今日、当事者である有限会社ドライバレッジジャパン(サービス名:スキャポン)のサイトに、待望(?)の「ご報告」(http://www.scapon.jp/pdf/20141104.pdf)がアップされた。

「本日,弊社は,知的財産高等裁判所第4部(富田善範裁判長)が平成26年10月22日に言い渡しました判決(弊社の控訴を棄却するもの)に対し,最高裁判所に上告しましたことを,ご報告いたします。」

第一審、控訴審で争われてきた争点のうち、「複製」該当性については、さすがに上告が受理される可能性はかなり低いと言わざるを得ない*2し、「利用主体が誰か(事業者か利用者か)」という点についても、上告受理申立理由を相当説得的に書かないと、“単純な事実認定の問題”ということで門前払いされる可能性は否定できない。

下級審段階では「真っ白」なサービスだった、あの「まねきTV」すら、結論をひっくり返してクロにしてしまった過去があることを考えると、今回のようなケースで、「最高裁」という保守的なコートに、時代の先端を行くような画期的な判断を望むのは、少々期待しすぎではないか、と自分は思っている。

だが、それでも、以下のような理想を高らかに掲げて、ドライバレッジは「上告」した。

「弊社サービスが著作権法上適法とされることで,著作者の利益に配慮しながらも、著作物の利用を促進させ,また著作物の利用の多様化を実現させる新規ビジネス,サービスを誕生させるようなきっかけとなり,また,お客様をはじめ多くの著作物利用者に技術的な恩恵の享受,利用上の便宜を与えられるものと考えております。技術が進歩し,著作物の利用,流通方法も多様化している現代において,その時代やその社会状況に即して著作権法が解釈されることが,文化の発展に寄与するものであると考え,上告することにいたしました。」

一審、控訴審と完膚なきまでに打ちのめされた状況でここまで来て、そこからこれまでの「結論」を完全に覆すのは、かなり難しいことだと思うのだけれど、それでも、先述した利用主体性や、それと関連して事業者側が主張してきた「私的複製」規定適用の可否、といった点について、最高裁の判決の中で何らかの判断*3が示されることになれば、それはそれで大きな意義が認められるのではないか、と自分は思っている。

果たして、一瞬の門前払いで終わるのか、それとも、最終的に「判決」という段階まで進むのか。

今、それを見通すことは簡単ではないが、この国において「三審制」が採用されている意味を皆が思い知らされるような、“サプライズ”な結末を微かに期待しながら、もう少し様子を眺めることにしたい。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20141025/1414434412

*2:前記リリースでの「上告」には、当然のことながら、上告受理申立ても含まれる、という前提で、以下コメントする。

*3:たとえそれが少数意見であっても。

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