残念なアンケート結果

日経新聞の法務面に、「日本組織内弁護士協会のアンケート調査」に基づく『社内弁護士の意識調査』が掲載されている。

そして、その結果といえば、

社内弁護士が現在の勤務先を選んだ理由は『ワークライフバランスを確保したかったから』が最多で52.9%だった」(日本経済新聞2015年8月3日付朝刊・第15面、強調筆者)

ということで、やはり・・・と、ため息しか出てこない。

以前、BLJの記事との関係でもコメントしたとおり*1、最近、社内弁護士を勧誘する際に、「ワークライフバランス」がとみに強調される傾向があることは否定できないし、最近の若手法曹の“気質”もそれなりに理解はしているつもりなので*2、そんなに意外感はないのだが、それにしても、これが“一番目の理由”と聞くと、正直がっかりする*3

二番目に挙げられている「現場に近いところで仕事がしたかったから」(48.6%)とか、その次に来る「その会社で働きたかったから」(31.2%)というのは、働く理由としてはまだ分かるし、回答としては“合格点”だとは思うけど、自分はやっぱり、

「充実した仕事をしたかった」
「中身のある、人のためになる仕事をしたかった」

といった理由が上位に来るようでないと、本当の意味で「法曹の企業への進出が進んだ」とは言えないだろうと思っている。

ちなみに、同じ記事の中に掲載されている「1日の平均的な勤務時間」では、

「9〜10時間未満」34.7%
「8〜9時間」32.9%

という結果が上位に来ているのだが、「一日の平均勤務時間が10時間未満」の法務部門が世の中のマジョリティだとは、到底思えない。

自分は決して、「長時間働くのが立派」という価値観の持ち主ではないのだが、今の日本企業の(脆弱な)法務部門の体制で、専門的な知識を生かして必要なことにくまなく対処しようと思えば、時間はいくらあっても足りない、というのが現実だと思うわけで、今の就業環境が「定時に退社できる魅力的な職場」であることに満足する前に、「自分がやるべき職責を全て果たした上でそうなっているのか?」ということを、よくよく自問自答する必要があるのではないかな、と思っている。

「弁護士」という資格を持って働いている、ということが周囲に与えるインパクトは、自分が想像している以上に大きく、重い。

そして、だからこそ、周囲から見て「仕事を頼みたくても頼めない」と思われてしまうような“腫れ物”になっていないか、少し油断するとそういう立場に陥りがちな立場にある、ということを肝に銘じて、日々緊張感をもって仕事に当たっていかないと、自分の役割を全うすることは難しい。


ワークライフバランス』一つ貫くにも、それなりに神経の細やかさが必要だし、『充実した仕事』の面白さに気付くためには乗り越えなければいけないものがいろいろある。
そういったことを考えると、「社内弁護士」という道は、決して「楽」な道ではないと思うのだけれど、今、その道を歩き始めた若い人たちが、自ら道の険しさに気づき、マインドをちょっとずつ切り替えていくことで、未来への道がつながっていく・・・ 自分はそれを心から願っている。

そして、その頃には、上記のようなアンケートの結果も大きく変わっているはず、と確信している。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20140924/1412010998

*2:回答者の過半数は経験5年未満、30歳未満、という構成になっている。

*3:有効回答数はわずか346人にとどまっているし、この協会に加入している社内弁護士自体が全体の中では「一部」に過ぎないから、この数字をもってすべてを語る必要はないと思うのだが・・・。

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