“8月就活”の狂騒曲の余韻も未だ残っている中、朝令暮改とはまさにこのこと、と言わんばかりの記事が日経新聞の1面を飾っている。
「経団連は今年から導入した大学生の就職活動のルールをもう一度見直し、面接など企業による選考の解禁時期を8月から前倒しする。今より2カ月早め、6月を新たな解禁時期とする方向で調整し、現在の大学3年生が対象の来年の採用から適用する。」(日本経済新聞2015年10月26日付朝刊・第1面)
このブログでは、以前から就職解禁時期を後ろずらしさせようとする動きに疑問を投げかけていたし*1、まさかの「8月解禁」が現実のものとなってしまった今年は、昔を振り返りながら、いろいろと批判記事を書いたものだった*2。
今年の就活スケジュールがいかに不合理なものだったか、ということに鑑みると、「過ちを改めるにしくはなし」という言葉どおり、さっさと変えるにこしたことはない。
だが、問題は改めた後の「6月」という時期にある。
日経紙の記事では、「6月」案の難点として、
「株主総会前の企業に負担増を強いる」
「梅雨の時期の就活を余儀なくされる」
といった尤もらしい理由が書かれているが(前記3面)、こんなものは些細な理屈に過ぎない*3。
自分が就職活動をしたのは、ちょうどこれくらいの時期に就活のヤマ場が来る時代だったからよく覚えているのだが、4年生の夏学期が始まって、講義もゼミもちょうど一番面白くなってくるのがこの時期なのに、学校に行けない・・・という嘆きが、自分の周りにはあふれていた*4。
その後、長い時間をかけて、徐々に面接のピークの時期が繰り上がっていった背景に、早めに良い学生を確保したい、という企業側の思惑だけでなく、春休み前後の早い時期にさっさと就職を決めたい、という学生側のニーズも存在していたことは間違いない。
記事によると、今年から会社説明会の日程が3月になったことで、「4月や5月だと会社説明会から選考までの期間が短い」ことが、「6月選考」の理由となっているそうなのだが、「説明会」で会社の情報収集をした経験のない我々の世代の人間にとってみれば、なぜ、説明会から面接開始までそんなに長い期間を設ける必要があるのか、さっぱり分からない。
今の時代、情報収集なんてインターネット上にいくらでも転がっているし*5、大学に入ってから大学3年の終わりまで、たっぷり3年間あるのだから、その間にインターンにいったり、現役社員を捕まえたりして、より生に近い情報を得ることも十分できるはずだ。
だから、自分は“原点”に回帰して、再び4月(3月でもよい)に面接開始時期を戻す、ということで、何ら問題ないと自分は思っている。
今になって、「経団連は従来のやり方を続けるよう主張していた」という裏話を持ち出してしまう経団連にどこまでの力があるのか半信半疑なのではあるが、全ては学生のため、ということで、どうせ頑張るなら「6月」などと中途半端なことを言わず、一気に「4月」まで解禁時期を繰り上げて、官邸と戦ってくれることを今は願うのみである。
*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20130315/1363802095
*2:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20150626/1436072815、http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20150824/1440786323
*3:実務サイドとしては、「株主総会前」という時期は確かに嫌なものだが、採用担当や助っ人に入る社内各部署の社員の多くは「株主総会」によって、日常の仕事に影響が出るような役割は与えられていないことが多いだろうし(総会担当者や法務担当者はもちろん採用に協力するどころではなくなるが・・・。)
*4:自分は元々講義を受けに学校に行くのは、片手で数えられるくらいの日数しかなかったし、ゼミも一度も取らずに卒業したから、この辺はあまり関係なかったのだけれど。
*5:「会社説明会」に行くと、何となく情報を得たような気分になるが、実際にそこで話されていることの多くは、会社のHPに掲載されている“公式のリクルート用コメント”とそんなに大差はない。