2016年8月12日のメモ

中途半端に祝日ができたせいで、有給休暇を取った(取らされた)人も多かったのか、さすがに今日は電車の中も閑散。
本当は、こういう時の大都会・東京が一年の中で一番快適なのだけど。

ヒラリー・クリントン氏TPP反対を明言

大統領選でドナルド・トランプ氏に対抗するための“転向”だ、と批判する日本国内の有識者は多いのだけど、“次期米国大統領”という立場で、今のTPPの内容(妥協の産物)に積極的に賛成する、という人がいるとすれば、個人的にはそっちの方が意味が分からないし、秋の大統領選後、よくて再協議、最悪白紙撤回、という結末になったとしても全く不思議ではないと思っている。

そもそも、米国なら、無理に背丈を合わせて経済圏を作らなくても、二国間協議で取れるものは取れるわけで、本来の路線に立ち返っただけに過ぎない。
日本にとっても、下手に再協議でハードルを上げられるくらいなら、いっそのこと白紙撤回にしてもらって、ASEAN諸国とのFTA協議に頭を切り替える方が国益にかなうと思ってしまうのは自分だけだろうか。

五輪の舞台にピークを持ってくることの難しさ

女子200メートル平泳ぎで、日本競泳陣の主将、金藤理絵選手が見事に金メダルを獲得。
日本女子史上5人目、27歳でのメダル獲得は最年長、というおまけも付いた。

今年に入ってからの好調が伝えられ、「世界ランク1位」というポジションで大会を迎えていたとはいえ、これまで大舞台ではことごとく結果を出せていなかった選手だけに、メディアが煽れば煽るほど半信半疑で見ていたのだが、これまでのうっ憤をすべて吹き飛ばすような圧勝劇、文句なしの結果だった。

今大会は、昨年の世界水泳に出場できなかった萩野選手が、個人メドレーで金、銀を取り、メダルを逃した金藤選手や男子200バタフライの坂井選手も良い色のメダルを獲ったのに対し、世界水泳優勝→五輪内定組の選手たちは、期待されたほどの結果は残せていないように思える。

瀬戸選手や星選手はメダルこそ確保したものの、本来なら表彰台のてっぺんを目指せたレベルの力はあったはずだし、金藤選手の金メダルの裏で、全く力を出せないまま敗退してしまった同種目の渡部香生子選手などは見ていて気の毒になるくらいの状況だった*1

一方で、伸び盛りの勢いで五輪選考会で切符を取った若い選手たちも、今大会ではかなり苦戦している。

五輪本番に向けて年単位で調整し、選考会を八分の力で通過して、決勝レースの当日に自分のピークを合わせる・・・ということが、どこまで狙ってできることなのか*2、ここまでハイレベルな競技経験のない自分には全く想像もできないのだけれど、結果的にピークを持ってこれた選手だけが歴史に名を残せる、という残酷な現実もあるだけに、いろいろと考えさせられるところは多い。

卓球界の悲願達成

卓球の男子シングルスで、水谷隼選手が日本人として個人種目で初のメダルを獲得。
日本の黄金時代に卓球が五輪種目だったら、とっくの昔にメダルを量産していただろうから*3、「初」というところを過剰に取り上げるのはどうかな、と思うのだが、五輪種目になってからしばらくはメダルなど到底望めないようなレベルで低迷していた時期もあっただけに、復活に向けた期待を一身に集め、3度目の正直でようやくここまで辿り着いた水谷選手にとっては、やはり“悲願”だったのだろう。

最終的に決勝戦でも圧勝した馬龍選手から2セットを連取し、あわや、というところまで食い下がった準決勝の試合は、今五輪の卓球のベストゲームではないか、と思うくらい素晴らしいものだったし、ああいう“魅せるラリー”は、卓球という競技への印象さえ一変させてしまう。

そして、長年、日本卓球界を牽引してきた水谷選手と、同じく女子の卓球をメジャーな存在に押し上げた福原愛選手が、今回の五輪の個人戦で頂点まであと一歩のところまで行った、ということは、4年後、さらにその先を考えた時に、大きな意味を持つように思えてならない。

良き敗者

朝刊でスポーツ面を丸1面独占していたのが、「内村航平選手の男子個人総合金メダル」の記事。
紙面は最大級の賛辞でおおわれているものの、掲載されている各種目のスコアを見ると、“薄氷”の勝利だったことに改めて気づかされる。

内村選手があん馬、つり輪で14点台に留まっているのに対し、2位のベルニャエフ選手のスコアは、最後の鉄棒以外全て15点台。
もちろん、内村選手には15点台後半の爆発的なスコアを出せる種目があるし、その貯金で最後「0.099」差での逃げ切りを果たしたのだが、パワー系からひねり系まで万遍なく平均的なスコアを出せるベルニャエフ選手の方が「個人総合王者」らしい、という見方もできるわけで、22歳という年齢を考えると、この先4年間、日本の牙城を揺るがす可能性は大いにある。

ロシアとの紛争に苦しむウクライナドネツク出身、そして、試合後のインタビューで、内村選手に「疑惑の採点」ネタで絡もうとした記者を「採点はフェアだ」と一喝した好漢ぶり。
今、日本国内で“グッドルーザー”として人気が沸騰している彼が、やがて憎ったらしいくらい強い敵役として戻ってくる日もそう遠くはないような気がする。

柔道界に現れた個性

お家芸”と言っても格闘技だけに、元々、一皮むけば個性的な人々が揃っていたのだろうとは思うが、男女そろってここまで“個性”が際立ったのも、なかなか珍しい。

男子90キロ級決勝で、最後の1分とにかく逃げまくったベイカー茉秋選手に対して、記者が送った称賛の言葉は、

「五輪でこれほどリアリストに徹した日本人が過去にいただろうか」(日本経済新聞2016年8月12日付朝刊・第20面)

女子70キロ級で優勝した田知本遥選手に対しても、

「『どこに入っても一緒。みんな強いし』との理由でポイント稼ぎを回避し、国内に籠もってライバルの研究にいそしんでいた」(日本経済新聞2016年8月12日付朝刊・第20面)

というエピソードが紹介されている。

イカー選手は、逃げまくった結果、この階級で日本人初の金メダルという偉業を成し遂げたわけだし、田知本選手も初戦で対戦した第1シードの選手を葬り去って、「世界ランクなんて関係ない」というポリシーを見事に体現して見せたわけで、“模範生ではなかった”ゆえの結果、ということもできるわけだが、これが果たしてこれから続く選手たちにどういう影響を与えるのか、興味深いところではある。

*1:今年に入ってから不調が伝えられており、五輪代表を決める日本選手権でのレースでも、金藤選手にはかなり水を開けられてしまっていたから、どうなるかな、と思っていたところではあったのだが・・・。

*2:少なくとも萩野選手の昨年の「欠場」は事故だし、金藤選手にしても昨年の世界水泳での屈辱から必死で泳ぎ込んだ結果が今回につながった、ということに過ぎないと思うのだが・・・。

*3:卓球が五輪競技になったのは1988年のソウル五輪から。

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