今さらの保護期間「70年」問題、再燃。

2016年の米大統領選の影響で12ヶ国によるTPPのスキームが崩壊し、既に成立していた著作権法改正案もめでたくお蔵入り・・・と思ったのもぬか喜びだったか。
日経紙に、2年前の議論を再び思い出させるような記事が掲載されている。

「政府は小説や音楽の著作権の保護期間を現行より20年長い「作者の死後70年」にする著作権法の改正案を今国会に提出する方針を10日までに固めた。没年が1970年の三島由紀夫や72年の川端康成ら昭和の文豪の作品の一部は数年内に著作権が切れてインターネットなどで無料公開できる見込みだったが、70年に延長されると先延ばしになる。」
「成立した場合、TPP11の発効で施行する方向。2017年12月に交渉妥結した日欧の経済連携協定(EPA)の発効が先となれば、TPP11の発効前に施行する可能性もある。政府はいずれの協定も19年の発効を目指している。」(日本経済新聞2018年2月11日付朝刊・第30面)

記事の中では「TPP11」が主な理由として挙げられているが、昨年EPAが大枠合意になった時点で「保護期間延長だけは入る」という噂は聞こえてきていた。

元々、保護期間延長、というのは、数年前の一連のTPP対応(著作権保護強化)の動きの中で、その分かりやすさゆえ“攻防”の目玉として掲げられていたが、「青空文庫」のような特殊な利用形態を除けば、著作者の死後「50年」もコンテンツとして消費され続けてきた作品を保護期間が切れたからと言って何の仁義も切らずに勝手に商用利用できるはずもない。

それゆえ、ビジネスベースの「コンテンツ利用」の観点からは、保護期間が20年伸びようが伸びまいがそんなに大きな影響はないわけで、この論点に対する企業実務家の関心は、決して高いものではなかった。

もちろん、50年先どころか、10年先ですら「既存のコンテンツの市場」が生き残っているかどうか疑わしいような、変化の速いこの時代に、「保護期間延長」が新たな創作のインセンティブになることなんて到底期待できないわけで、「創作インセンティブの保護」という著作権法の本来目的に照らして保護期間延長にどれだけの意味があるのか?という問題に何ら答えが示されていない以上、“延長”に手放しで喜ぶわけにもいかないのだが、海外の著作権法制に接していると、無意識のうちに「70年」という数字が刷り込まれてしまうのも確か。

創作者にとっても、ユーザーにとっても大した影響がないのであれば、諸外国に合わせて変えたところで大勢に影響はない、だから変えてしまえ!!という発想も、(少々乱暴ではある
が)当然出てきて不思議ではない。

あとは、おそらく3月になると思われる著作権法改正案の閣議決定のタイミングで、他にどんな規定がセットで付いてくることになるのか。

ユーザーの立場からしたら、本来は

「保護期間延長」を認めても良いけど他の「利用機会確保策」とのバーターで・・・

ということにしたかった話だけに、今後の「新・改正法案」の行方が気になるところである。

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