失望しかない「27人」のリスト。

新年度早々に起きた“悲劇”さえなければ、今頃はロシアW杯に向けた密かな期待に胸を高鳴らせていたはずだった。

お世辞にもメディア受けが良い監督とは言えなかったし、選手受けはもっと悪かった、と聞く。
それでも、ハリルホジッチ監督が目指していたサッカーの姿は明確だったし、早期敗退の憂き目を見たこれまでの日本代表が抱えていた弱点を克服するための処方箋も施していたと思う。

親善試合はあくまでテストの場、本番に向けてメンバーが揃い、持ち前の分析力で対戦相手に応じた対策を徹底的に施せば、8年ぶりのベスト16、いやそれ以上の結果も出せる・・・と自分は確信していた。

それが、まさかの土壇場での解任劇。
ガラパゴス島国”を象徴するかのような不透明なプロセス、かつ、理由にならない理由で世界基準の監督の首を斬る、という日本サッカー協会の愚行に赤面したのが1カ月ちょっと前の話である*1

本当のところ何がトリガーになったのかは、門外漢の自分には知る由もない。
メディアでは様々なうわさが飛び交うが、それをどこまで信じれば良いのかもわからない。

ただ、個人的な感想としては、あの報を聞いた瞬間、日本がベスト16から上に行く可能性は限りなく低くなったな、と思った。
そして、5月18日、W杯本選に向けて発表された27人のメンバーは、さらにそんな予感を強めるものとなってしまった。

以下、ハリルホジッチが最後に指揮をとった3月とのメンバー比較。

<復活>
DF 吉田麻也
MF 青山敏弘
MF 井手口陽介
MF 香川真司
MF 乾貴士
FW 岡崎慎司
FW 浅野拓磨
FW 武藤嘉紀
<落選>
DF 宇賀神友弥
DF 森重真人
DF 車屋紳太郎
MF 森岡亮太
FW 杉本健勇
FW 小林悠
FW 久保裕也
FW 中島翔哉

DF陣に関しては、落とされた選手たち自身、代表でレギュラーとしての信頼感を勝ち得ていたとはお世辞にも言えなかったし、解任抗議コメントで一躍名をはせた槙野選手も今のところ落選を免れているから*2、これでやむを得ないとして、問題はMF、そして大幅入れ替えとなったFW陣である。

MFに関しては、最終予選の実質MVP、井手口選手が戻ってきたことにはホッとしたし、乾選手、青山選手も現在のパフォーマンスを考えると選ばれてしかるべきだと思うのだが、香川選手をここで戻すのか・・・というところがとにかく引っかかる*3

そして、FWに至っては、岡崎選手はともかく、ここ最近は代表で通用するだけのものを見せていなかった武藤、浅野*4といった選手たちをなぜここで・・・?という疑問が拭えない。

少なくとも、欧州で実績を積み、目下世界基準のFWに一番近いと思われる久保裕也選手を外す、という選択肢はあり得ないと思っているし、3月の親善試合で希望の光を放った中島翔哉選手を連れて行かないのも、日本代表の未来にとって大きな暗雲というほかないわけで・・・。

自分は、西野朗監督が率いたアトランタ五輪U-23代表にはものすごく思い入れがあったし、例のブラジル戦の奇跡の勝利に狂喜乱舞したことも、未だに昨日のことのように思い出せる世代の人間である。だから、西野監督が何よりも信頼と安定を重視するスタンダードなチーム作りをする監督だということも容易に理解できるところで、スポンサー受けを狙ってこの選考にしたんだろ、なんて、悪態を吐くつもりはない。

だが、「マイアミの奇跡」が文字通り一夜限りの奇跡に終わってしまったことが如実に証明しているように、固定化されたメンバーで変化の激しい短期決戦を切り抜けるのは至難の業だし、少なくとも今回発表されたリストの中に、窮地を打開できるような化学反応を起こせる可能性を秘めた選手はほとんど見当たらない*5

あくまでこれはガーナ戦に向けた選手選考に過ぎず、予備登録メンバーからの離脱者の補充含め、まだまだ追加、入れ替えのチャンスはある、ということなのかもしれないが、「大昔の名前」と「一昔前の実績」だけで戦えるほどW杯って甘い舞台ではないし、日本代表も、今の代表監督も「横綱相撲」ができるほどのレベルではない、ということは、何よりも自分たちが一番良く分かっているはず。

こうなったらもう、今大会の結果も期待しないから、せめて4年後に希望を抱かせるだけの何かを、というのが自分の切なる願いである。そして、アトランタ五輪のグループリーグで尖がり過ぎて「戦犯」扱いすらされていた一人の選手が、4年後の五輪、そしてその後のW杯で輝きを放った、という歴史がもう一度繰り返されるのであれば、今年の解任劇も、W杯での敗北も、いずれは肯定的な歴史の中に位置づけられるのではないかと思っている。

*1:前回のW杯で無名のチームをベスト16に導き、それ以前も欧州大陸で輝かしい実績を残してきた監督をこのタイミングで切る、ということの浅はかさを罵倒する言葉を探せばキリがない。監督としては何の実績もなかったジーコや、「昔の名前」でしかなかったザッケローニを“日本への理解がある”ということだけで重宝し、本番で見事なまでに散った過去との対比でいっても、あり得ない選択だったと思う。これで、しばらく外国の人とサッカー談義はできないな・・・と感じるに十分すぎる恥辱、国辱的解任騒動だった。

*2:もっとも、槙野選手のプレースタイル自体は自分は全く好きではないし、本番では「穴」になりかねないので、できればベンチにいてほしい選手なのだが・・・。

*3:個人的には、香川選手が嫌いというわけでは全くないのだが、どうにも、かつての中村俊輔選手と同じような負のオーラが付きまとっているように思えるだけに、大舞台で選ぶのはちょっと・・・という気がする。

*4:浅野選手に関しては、昨年のW杯予選・オーストラリア戦でのゴール、というのもあるので、まだ分からんでもないのだが・・・。

*5:せいぜい遠藤選手、井手口選手、乾選手くらいだろうか。監督としての状況に応じた采配、という点においては、西野監督の力量はハリルホジッチ監督に到底及ばないだけに、せめて選手セレクトの段階で自発的な“伸びしろ”に期待できるようなリストを用意してほしかったのだけど・・・。

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