日本女子代表の快進撃と、そこはかとなくこみ上げる申し訳なさと。

サッカー女子日本代表が出場したFIFAワールドカップ

佐々木則夫監督率いる”なでしこジャパン”が、男女通じて日本史上初のW杯制覇を成し遂げ一大旋風を起こしたのも今は昔で、既に干支は一回り。

その翌年のロンドン五輪の時はもちろん、2015年W杯で準優勝した時くらいまでは自分にもまだ熱が残っていたし、翌年のリオ五輪予選も祈るような思いで声援を送った*1が、公式戦の試合をちゃんと見たのはあの時が最後。

高倉麻子監督時代は、W杯出場、五輪出場の実績もあったのに、試合の記憶はほとんどなかったし*2、五輪後に監督が変わった時も、元レッズの人かぁ・・・程度の感想しかなかった。

リーグが一新されたタイミングとはいえ、2010年代前半に比べれば露出も控えめ、今大会前のプロモーションも控えめ、ということで、ともすれば見逃しても不思議ではないレベルのイベントだったのだが、そんな印象が一変したのは、たまたま初戦のザンビア戦をFIFAのウェブストリーミングで見た時。

みんな巧い。そして速い。

かつての日本女子代表は、良くも悪くも”根性のチーム”という印象が強かった。

もちろん選手一人ひとりを見れば、ずば抜けた身体能力を持つ澤穂希選手に、圧倒的なキャプテンシーで君臨する宮間あや選手、前線でゴリゴリ押していく永里(大儀見)優季選手、独特の走りでサイドを駆け抜ける鮫島彩選手・・・と、選手たちのキャラは相当立っていたし、スピードという点では川澄奈穂美のドリブルも当時の世界水準では間違いなく一級品だったのだが、全体的な印象としては「力で勝る敵方にどれだけシュートを打たれても跳ね返し、最後は粘りで逆転する・・・」というど根性チームのスタイルがあの頃の代表チームのカラーだった気がする。

だが、あれから約10年の時を経て、画面越しに躍動する日本代表の姿は、当時のすべてを超えていた。

徹底的にボールを拾ってつなぎまくる長谷川唯選手の動き。中盤から、サイドからDF、MF陣が図ったように送り込む決定的なクロスとスルーパス
そして何よりも、足元にボールが吸い付くようなドリブルで相手守備陣を置き去りにする宮澤ひなた選手のスピードといったら・・・

どちらかと言えばクラシカルな戦術から脱し、縦に速い攻撃を志向し始めたように見えたリオ五輪予選で様々なものがかみ合わずに敗れた。自分の記憶はその時のままずっと止まっていたのだが、それが一気にアップデートされ、何の期待もせず眺めていたことが恥ずかしくなるような爽快な展開に思わず喝采を上げる。

続くコスタリカ、スペインという昨年の男子のW杯のVTRを見ているかのようなカードでも、勢いはとどまるどころかより加速して瞬く間の3連勝。

そして、ここ数大会では「鬼門」のようになっていたトーナメント初戦のノルウェー戦も、事実上の先制点(記録上はオウンゴール)と決定的なダメ押し点を宮澤選手が決める、という理想的な展開で3-1の完勝。

長身選手が揃ったノルウェーにパワープレーで攻め込まれる危ない時間帯もあったし、そこで守備陣が見せた粘りは間違いなく伝統芸のそれ、だったのだが、熊谷紗希選手にしても、南萌華選手にしても、はたまたGKの山下杏也加選手まで、攻撃を跳ね返してボールを奪ってからの組み立てがとにかく徹底していて、前につなぐテクニックにも長けているから、ピンチが次の瞬間には絶好機に変わる。

この日、勝ち越しのゴールを決めたのが、サイドバックの清水梨紗選手だった、というのはまさにその象徴のような出来事だったし、彼女がゴール前で魅せたシュートテクニックは典型的なディフェンスの選手のレベルのものではなかった。

かくしてベスト8進出。

今大会何試合か見ているうちに、ああそういえば・・・と思い出したのが2012年に日本で行われたU-20の女子W杯で、あの時も「個」の力と、縦に速い組織戦術が見事に噛み合っていた。

k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

そこから11年。

当時、「新星」として脚光を浴び、自分も一人二人のみならず名を覚えた選手たちの「その後」を自分はどれだけ見ていたのか、ということを考えると、これまた申し訳ない気持ちしか出てこない。

あの時のメンバーで今大会にも出場しているのは、FWの田中美南選手と、ボランチで悲願の主要大会初出場と話題になっている猶本光選手くらいだろうか。

当然時が流れれば、選手としては皆ベテランの域に差し掛かってくるのだけれど、あれからも日本で、欧州で、様々な経験を積み重ねて今フィールドに立っているのだろうな、ということは容易に想像がつく話だけに、移り気なにわかファンのせめてもの罪滅ぼしに、今大会が終わるまでは全力で声援を送り続けよう、と心に決めている。

あと1つ勝てばさらに2試合。何とかそこまでは行ってくれ・・・と願いつつ。

*1:当時のエントリーがこちら。k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

*2:岩渕真奈選手のInstagramはフォローしていたが・・・。

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