加速するマンネリと、動かないランキングと。

年末の風物詩、となっている日本経済新聞の「企業法務・弁護士調査」。
今回で実に14回、ということだから、このブログとほぼ同じくらい続いている、ということになるが、一方で近年“マンネリ化”の風潮が強いというのも、例年指摘しているとおりである*1

そして、「法務部門の拡充 1年で3割が増員」という今年の大見出しを見て、とうとうマンネリもここまで来たか・・・という思いがより強くなった。

日本経済新聞社がまとめた第14回「企業法務・弁護士調査」で、弁護士を社員として雇用している企業が全体の6割を超えたことが分かった。こうした企業内(インハウス)弁護士を過去1年で増員した企業は3割に上り、1社当たりの平均人数も3人に迫ったグローバル化を背景に専門性を持つ法務人材のニーズは大きく、今後も法務部門を拡充する企業が多い。」
「多くの日本企業が法務部門の強化を迫られている格好で、専門性が高く即戦力となるインハウス弁護士の採用を増やす動きが強まっている。過去1年間で増員したのは62社で、回答した208社の30%。2人以上増員した企業は27社ある。
インハウス弁護士がいる企業は135社(65%)となり、およそ3分の2が弁護士を配置している。60%弱だった前回(2017年)調査から約5ポイント上昇した。5人以上抱える企業が40社(19%)あった。」
日本経済新聞2018年12月17日付朝刊・第11面)

ネタとしては、昨年と全く同じ。
そして、取り上げられている内容も、画期的な何か、では全くなく、これまで法務部門を支えてきた社員が抜けた穴を有資格者で埋める、という話の域を全く出ていないように思われる。

昨年のエントリーでも書いた通り、今、全体的な傾向として、「社内弁護士」の数が飛躍的に伸びている、という傾向は、法務業界には全く存在しない。

変化の激しさとしては、職にあぶれた“新修習”組が大量に企業の門を叩いた2010年代前半の方が遥かに大きかったし、一時は「弁護士資格」が必須要件になっていた採用エージェント経由の「採用条件」も、最近では再び「資格不問」となるケースが増えている。

企業の中に弁護士が大量に入り始めてからもう10年近く経っているから、どの会社でも、記事の最後の方に出てくる、

「高度な法務知識と経営センスなどを兼ね備えた人材であれば、弁護士の資格の有無は問わない」(化学)
「適切な人材が不足している」(食品)

といった意見を出したくなるような経験を一度や二度ならずしているわけで、それが「おおむね3年以内に法務部門全体を増員する」という考えを示した134社のうち、「弁護士で」数を増やそうと考えている会社は79社しかいない(一般社員を増やす企業は120社、弁護士登録をしていない「有資格の未登録者」を増やす企業は25社)という結果にもつながっている。

そのような状況で「変化」を取りあげるとしたら、ここ数年、「法律事務所からの転職」や「法律事務所志望だったけど実らず企業入り」というパターンよりも、

「最初から企業の中でキャリアを積みたい」

という志向が強い有資格者が増えている(一方で、採用の枠が少ないために断念して法律事務所に就職する、という以前とは逆のパターンも増えている)、ということくらいなのだが、この記事の中ではそこには一言も触れられていない。

そして、(これは十分想像できたことだが)今回の結果を今年のBuzzトピックになっていた「経産省報告書」の話と無理やり結びつけて結論に持っていこうとすることで、例年のこの企画と同様、極めてミスリーディングな記事となってしまっている*2

自分は、そもそもこういう分析を、一般メディアや、ポジショントークにしか関心がない組織弁護士の団体関係者等に委ねること自体に無理があると思っていて、このエントリーも、本来積極的に情報を出していかないといけない「現場の人間(=我々)」が忙しさにかまけて口を閉ざしていてはいけない・・・という自戒を込めて書いているのだが、願わくば、元号も変わる来年からは、地に足の付いた議論がきちんとできる環境、というものを作り上げていかないといけないな、と思っているところである。

なお、最後に、一部では依然として関心が高い「企業が選ぶ弁護士ランキング」、今年の結果は以下のとおりだった。

<企業法務分野>
1.中村直人(中村・角田・松本)24票
2.太田洋(西村あさひ)17票
3.野村晋右(野村綜合)12票
4.武井一浩(西村あさひ)11票
5.柳田一宏(柳田国際)10票

毎年、中村直人弁護士のトップが揺るがないので代わり映えしない印象があるものの、13年前の調査*3に比べると、やはり上位の顔ぶれは大きく入れ替わっているわけで、これまた、「平成」という時代の終わりとともに来年以降さらに新しい風が吹き込まれることを自分は期待してやまない。

*1:昨年のエントリーはhttp://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20171218/1513703568

*2:個人的には「法務部門が果たすべき機能」という話と、「法務部門の体制」や「企業の法務部門に入ってくる人々の志向、属性」の話は、きちんと区別して分析されるべきだと思っていて、それを無造作にごちゃ混ぜにしてまとめられてしまうと、所詮は素人の調査だな、という感想しか出てこない。

*3:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20051223/1135306868参照。今見て思い出したが、当時のトップは武井一浩弁護士!だった。