この国で「新サービスによるイノベーション」と「規制」との緊張関係が話題になって久しいが、そんな中、この種の話題が好きな日経紙の法務面に、再び「新興ビジネス」と「ルール」に関する記事が掲載された。
「スタートアップや新しいビジネスに携わる団体が自ら政府に働きかけ、ルールづくりに取り組む動きが活発になってきた。欧米では公共政策と呼ばれ、浸透しているが、日本では緒についたばかり。「ルールをつくる力」は日本のイノベーションの発展に欠かせない。シェアリングでは自主ルールで世界をリードしようという取り組みが始まった。」(日本経済新聞2019年4月22日付朝刊・第13面)
前半は、事業者団体による自主ルールに基づく認証の話で、どちらかといえば、かなり古い時代から行われてきた取り組みの延長線上にあるものだが、政府が早い段階から「モデル指針」という形で関与してきていることと、ISOまで舞台に巻き込もうとしている、というところの真新しさがちょっと目を引く。
また、後半は、ここ数年でBuzzワード化した「ロビイング」の話。
「IT(情報技術)業界では、政府に自ら働きかける「ロビイング」や「公共政策」を巡る動きが活発だ。ヤフーやLINEといった新興大手は自社で専門の部署や社内弁護士を抱える。ただ創業まもないスタートアップなどは必要な知恵や経験、人脈が足りない。」(同上)
記事では、この前振りに続いて、マカイラや紀尾井町戦略研究所といった「政策助言事業」を紹介している。
個人的には、最近の「ロビイング」、特にインターネット新サービス系のそれは、本来リスクをとって先に事実を先行させてもよいところで*1、抽象的な「リスク」をアドバルーンに明確な勝利の方程式もないままムードだけで「立法」を叫んでいるような雰囲気も感じるので、戦略としてはあまり賢明ではないんじゃないかな、と思っていたりもする。
ただ、一方で、世の中全体が、単なる「陳情」を超えて、実際にビジネスにかかわっている者がある程度ロジカルな「立法」の議論に参加できる方向に向かっているのだとすれば、それは決して悪い話ではないのも事実。
ちなみに、自分は、この手の話題に関心のある方には、(この記事の中にも登場される)ヤフーの別所直哉執行役員が書かれた↓の書籍をまず読むように、とお勧めしている。
- 作者: 別所直哉
- 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日: 2017/12/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この中に書かれている、別所氏&ヤフーの「ルールを変える」試みの中身全てを自分が支持しているわけではもちろんない*2。
ただ、政・官・財の世界で、「ルール」を変える、あるいは「ルール」を作るために、どのようなステップが必要で、何かを変えようとするときに何がそれを阻もうとするのか、それを乗り越えるためにどういうやり方があるのか、といった点について、初歩的なところからちょっと踏み込んだところまで*3、これだけ分かりやすく解説されている文献は、他になかなかないものだから、「ムード」や「雰囲気」だけで立法を語る前に、まず読んだら?という趣旨で、いつも強烈なレコメンドをさせていただいているところである。
以上、またいずれ何かのきっかけで、上記書籍に触れつつ、立法プロセスへの関与について語る機会もあるかもしれないが、とりあえず本日付のエントリーはこの辺で。