美しすぎたゴール前の攻防。

先週、「芝のジャパンカップ」でとうとう外国招待馬がいなくなってしまった、という話題が盛り上がっていたところだったのだが*1、その翌週に行われたのは、当の昔に外国調教馬のためのレースにすることはあきらめ「ジャパンカップ」の冠を外してはや6回目に突入したダートの国際GⅠレース、チャンピオンズカップ

右回りの阪神から左回りの中京にコースを移した際には、少しでも外国馬が来やすいように、という思惑も込められていたはずなのだが、同時に「招待」制度自体をやめてしまったこともあり、外国からまともな馬が来なくなって久しく、今年は2年ぶりに出走馬ゼロ。

とはいえ、「外国馬はいなくてもレベルの高いレースはできる」のが今の日本ダート界。そして、「馬は来なくても騎手はいる」のが今の日本競馬である。

出走した顔ぶれは、JBCクラシック南部杯といった地方路線参戦組から、みやこS武蔵野Sという中央重賞路線の馬まで多士済々。
古馬勢では、今年初めのフェブラリーSの1,2着馬と、直近のJBCクラシックの1,2着馬がきっちり顔を揃え、それらの馬に、デビュー以来無敗の5連勝で駆け抜けてきた3歳馬・クリソベリルが挑む、という世代対決構図までしっかり設定されていた。

そして、鞍上には、ルメール、川田、武豊、福永といったランキング上位勢が名を連ね、それに短期免許で騎乗中のデットーリ、スミヨン、ムーア、マーフィーという腕利き外国人騎手たちが挑むというこれまた豪華すぎる顔ぶれ*2

だから、オッズも割れ気味で、一応、このレースを含む中央ダートGⅠをいずれも制したことのあるゴールドドリームが1番人気、続いてクリソベリル、インティ、という順ながら、単勝10倍を切る馬が他に2頭もいる、というなかなかの混戦ムードではあった。

ここ数年は1番人気馬がきっちり馬券に絡んではいるものの、人気薄の馬もセットで飛び込んでくるのがこのレースの特徴でもあり、自分も、戦前からこれだけ人気が割れるとなれば、そこそこ荒れるだろう、と思っていたところではあったのだが・・・。


蓋を開けてみれば、武豊騎手が騎乗するインティが軽快に逃げ、クリソベリル、ゴールドドリームも好位を追走。

最後の直線に入って、ルメール騎手が操るゴールドドリームがじわじわと進出してインティを捉えたが、その隣でぴたりと食い下がっていたクリソベリルが川田騎手のムチに応え、3頭併せ馬のような形の中、さらに一伸びの勝負根性を発揮してクビ差前に出たところでゴール・・・。

入線順位は、2番人気、1番人気、3番人気と微妙に順位はズレたものの、他の馬からは一歩抜けた上位3頭の壮絶な攻防が、これまでになくこのレースを面白くしてくれた。

特に、4コーナーから直線に向くところで、手応えが怪しくなったように見えたクリソベリルを、激しいアクションで再起動させ、ようやく待望のGⅠタイトルを手に入れた川田騎手の必死さ*3は、場内を盛り上げるに十分だったかな、と思う*4

引き立て役になってしまったとはいえ、武豊騎手は、最近、開拓しつつある新境地、「逃げ」で、見事に自分のペースを作ったし、ルメール騎手の追い出しまでのコース取りもいつもながらに完璧。そんな状況で待望のGⅠ勝利を手に入れたのだから、川田騎手の嬉しさもいつも以上だったのではなかろうか。

芝に比べれば、ダートの世界は日本国内で勝っても世界ランキング上はまだまだ、というのが、これまでの競馬界の序列だった。

とはいえ、無傷で6連勝を飾ったクリソベリルがこれから海外を目指せば十分太刀打ちできそうな予感はするし、路線がきっちり整備されてノーザンファームをはじめとする大手牧場が次々と秀逸な馬を送り込んできている状況を踏まえるなら、これからの世代にもまだまだ期待できるところはあるわけで、この日の美しすぎるゴール前の攻防が、新しい時代の幕開けになることを自分は願ってやまない。

*1:悲しすぎる運命の悪戯。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~

*2:中山で”留守番”となってしまったビュイック騎手にはちょっと気の毒な状況ではあったが・・・。

*3:人気馬に騎乗しながらことごとく惜しい2着、というレースが続いたこともあって、これが今年初の中央GⅠタイトルである。

*4:入線直後にどこからともなく川田コールが起きていたのがすごく印象的でもあった。

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