省令改正を待ちながら・・・。

4月以来、全国に発令されていた「緊急事態宣言」が、遂に39県で解除されることが決まった。

もしかしたら、一足早く自分の居住エリアの解除が決まって喜んでいる人も多いのかもしれないが、今日までの感染者判明数(そしてその前段の相談件数等)の揺れ具合を見ても、東京近郊は決して新型コロナウイルスを”鎮圧”できている状況とは言えないわけで、住民としては「まだ続いてくれて助かった」というのが本音だったりもする。

言うなれば明日以降始まるのは、既に制限解除→第2波のぶり返しに襲われている海外の国々より、もっと近いところで行われる一種の社会実験。

もちろん、犠牲者がこれ以上増えないことを願ってはいるものの、一部の地域では、早まった「経済重視路線」に釘を刺すようなインパクトが生じる可能性も薄らぼんやりと想像できるわけで、こちらとしては、とにかく最後まで油断するな、と念じながら、これまでどおり、しのいでいくしかないのだろうな、と思っている。


で、そんな前振りはさておき、今は既に木曜夜の深夜、ということで今週も残すところあと1日。

そして、週初めに公式のWebサイトにアップされて大きな話題となった「法務省令改正」*1のために残された日もあと1日、ということになる*2

法務省の「公約」どおりだとすれば、おそらく明日改正省令が署名され、即日公布、ということになるのだろう。

ただ、一方で明日は決算発表が一つのピークを迎える日でもあり、そのことはすなわち、決して少なくない3月期決算会社が、決算発表の承認に合わせて定時株主総会の開催方針や議案の内容まで決定するために取締役会を開催する日でもある、ということになる。

そこで頭に浮かんだのが、

「仮に明日改正法務省令が即日公布されるとして、明日の10時からの取締役会での総会招集手続に関する決議を予定している会社は改正後の法務省令の恩恵を受けられるのだろうか?」

ということで、この論点に関しては、ちょうど最近、参議院法制局の方が書かれたと思われるコラムを見つけて、ああそういえば・・・と懐かしい議論を思い出したりもしていた。

houseikyoku.sangiin.go.jp

まぁ、実のところ、明日の時点で監査法人のレビューまで終わった状態(あるいは、少なくとも決算短信には目を通された状態)で決算発表できるような会社であれば、改正省令の特例を使わなくても、計算書類を(印刷された)招集通知にしっかり載せて手続きを進めることができると思われるし(この点については先日のエントリーでもコメントしたとおりである)、そもそも、大きな会社になればなるほど、取締役会に付議されるような(しかも「株主総会」レベルの)大きな話となれば、下は、関係する部署の課長、次長、部長、担当役員から、上は社長、会長、相談役に至るまで、何日もかけて根回しをするのが常だから、「今週ポンと出た話で、今日施行されたから、じゃあそれに乗っかろう」ということには基本的にはならない*3

もちろん、したたかな担当者なら、この情報を察知した時点で、瞬時に事前の説明資料に「プランC」を潜り込ませ、明日の朝一番で資料を差し替える、という離れ業をやってのける可能性も皆無ではないから、そこはちょっと注目しながら見ていきたいところなのだが果たしてどうなるか・・・。

ちなみに、もしかしたら明日以上に決算発表した会社が多かったかもしれない今日(14日)は、4社から延期、2社から継続会のリリースが出されていた。

そして、個人的にはその中の一社、東証第二部上場の玉井商船㈱という会社が出されたリリース*4の以下の一節がとても印象に残ったので、ここでご紹介しておくことにしたい。

「新型コロナウィルスの感染症の感染予防・拡大防止の為、株主様の安全を第一に考えた結果、本日開催の取締役会において、6月に開催を予定しておりました定時株主総会は、継続会の実施ではなく、延期することとし(以下略)」(強調筆者)

どの会社もそうだと思うが、おそらくこちらの会社も、計算書類の確定が5月中には間に合わない、ということが見えてきた段階で、「継続会」方式にするか、「延期」にするか、喧々諤々で議論されたのだろう。そして、最後は「6月に会合を開くことのリスク」を考慮した上で、「延期」という判断をしたのだろう・・・ そんな光景が思い浮かんで来るような、起案者の思いが滲み出たリリースのように自分には思えた。

「緊急事態」は明けても、依然として「平時」ではない状態で行われる年に一度の大一番。

これまでのエントリーでも繰り返し申し上げてきた通り、会社の数だけ「個性」が顕れ、そしてドラマが生まれる。

6月総会の会社(6月総会になるはずだった、という会社も含め)の関係者の方々にとっては、これからまさに、「筋書きを作るための、筋書きのない苦しい戦い」を迎えることになるわけだが、最後はちょっとでも満足できる形で終われるように、そして、その頃には、「終わった後にその辺で気持ちよく一杯」ができるような世の中が戻っていることを願ってやまない。

*1:内容についてはこちらのエントリーを参照のこと。「延期」か「継続会」か、それとも「予定どおり」か? 6月定時株主総会をめぐる瀬戸際の攻防。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~

*2:既に2020年5月15日の午前1時40分になろうとしている時間帯だが、こちらの法務省のページ(法務省:定時株主総会の開催について)は、5月12日の更新時からリニューされていない。

*3:この点については、川井信之弁護士のブログ記事の中でも「6月総会の会社さんにとっては、どこまで意味のある改正なのでしょうね(念のためですが、批判ではなく、単純な疑問です…)。時期的に言って6月総会の会社さんにはちょっと間に合わなかった改正のようにも思えなくもないですし…」というつぶやきが発せられている(法務省、「定時株主総会の開催について」を更新、ウェブ開示の範囲を時限的に拡大する省令改正を告知 - 弁護士川井信之(東京・銀座)の企業法務(ビジネス・ロー)ノート)。車が急に止まれないのと同じで、大企業が急な方針転換をするのは至難の業。それならその前に決めていた方針通りに延期なり継続会なりの方針で淡々と進める会社の方がおそらく多いはずである。

*4:http://www.tamaiship.co.jp/kabunushisoukaienki20200514.pdf

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