6月19日の前か後か、それが本当に問題、なのか?

これまでの1,2か月、仕事で一息ついた後にカフェに行き、冷たいコーヒーを一杯注文したものの、それまでの感覚だと「閉店」するにはあまりに早いタイミングで店員さんに声をかけられて(あるいは店内に大音量で流れる「蛍の光」に追い立てられて・・・)、思索にふける間もなく慌ただしく撤収、という日々を繰り返してきた。

だから、今日もちょっと早めに仕事を切り上げて、”いつものペース”でせわしなく飲んで、慌ただしく店を出る準備をしていたのだけど、そこで流れるはずの音楽は流れず、店員さんに声をかけられることもない・・・。

そうか、これが「緊急事態宣言が明けた」ということなんだ、と実感した中途半端な週の初め、火曜日の夜だった。

もちろん、昨日のエントリーでも書いた通り、どこに行ってもまだまだ人通りは少なく、閉まっていた店舗もタイミングを見ながらおそるおそる、という状況だから、「1席飛ばし」をしているカフェでも席にありつけない、という事態にまではまだなっていないのだけど、そのうち、街中が”飲食店難民”であふれることになってしまうんじゃないか、というのが当座の心配だったりもする。

示された「移行期間」の微妙な線引き

さて、出た時点ではちゃんと資料に目を通していなかったのだが、昨日、令和2年5月25日付で「緊急事態解除宣言」と同時にリリースされたのが、各都道府県知事宛ての「移行期間における都道府県の対応について」という事務連絡文書である。

https://corona.go.jp/news/pdf/ikoukikan_taiou_0525.pdf

この文書には、外出自粛や催物(イベント等)の開催制限、施設の使用制限等に関し、各都道府県が今後の取り組みにおいて留意すべき事項が記されているのだが、そこで意図されている「段階的緩和」の時期的な目安となっているのが、3つのステップに分けられた「移行期間」

そして、このステップは概ね3週間刻みで設定されており、文書の表現をそのまま借りると、

・ステップ① 5月25日~ 
・ステップ② 6月19日~
・ステップ③ 7月10日~
・移行期間後 (感染状況を見つつ、)8月1日を目途

という表現になっている。

これが東京都知事の「休業要請の段階的緩和」という話につながっているし、プロ野球の開幕日程決定、という話ともつながるのだが、自分は、やはり、この「6月19日」という、どことなく中途半端な日付が気になって仕方なかった。

www.nikkei.com

おそらく今年も6月11日のトヨタ自動車あたりからニュースになり始め、15日の週から連日10社、20社、数十社、と続々と開催されていく定時株主総会

そのシーズンのまさにど真ん中に位置する、この「6月19日」という日付。

興味深いことに、先に都道府県知事宛ての連絡文書の別紙では、「イベント開催制限の段階的緩和の目安」として、以下のような数字が挙げられている。

ステップ① 5月25日~ 屋内 収容率50%以内 又は人数上限100人 の小さい方
ステップ② 6月19日~ 屋内 収容率50%以内 又は人数上限1,000人 の小さい方
・ステップ③ 7月10日~ 屋内 収容率50%以内 又は 人数上限5,000人 の小さい方
・移行期間後 8月1日目途~ 屋内 収容率50%以内(人数上限なし) の小さい方

「100人」と「1,000人」の違いは実に大きい。

そんなに目立たない会社であれば、東証一部上場の会社でも出席株主が100名に満たない総会は決して珍しくことではないのだが、逆にそういう会社が、わざわざ200人以上収容できるような「ハコ」をあらかじめ用意していることは少ないから、上の目安を遵守しようとすれば、より少ない人数を「上限」として策を講じないといけなくなることも考えられる。

逆に、BtoCビジネスで、株価が上がっても下がっても株を持ち続けるような熱心な株主が多い会社だと、「100人」のキャパは、動員するスタッフと社員株主だけで優に超えてしまいそうだし、いつもの年なら「1,000人」ですら「上限」とするにはあまりに過酷な状況になってしまうだろう。

もちろん、これまで3月~5月に行われた定時株主総会においては、「お土産の廃止を目立つ形で周知する」「招集通知に『来場はお控えください』と太文字で書く」「招集通知を送付した後にさらに『書面or電子での議決権行使のお願い』ハガキを送る」「事前登録制を採用する or 当日の来場後の『抽選』を予告し、わざわざ足を運んでも入れないかもしれませんよ、と念押しする」等々、事務局があの手この手で涙ぐましい努力をした結果、大幅に来場株主数を減らすことができた会社もあった。

だが、それも、感染判明者数の急激な増加や、「緊急事態宣言」という”非常時”を知らせるお告げの追い風があってこそのことで、既に世の中が雪解けモードになり、これまで「自粛」を強く求めてきた政府、自治体ですら、「さぁ町へ出よう」的な方向に政策の旗印を向け始めた今、過去数か月の成功事例がそのまま通用するかどうかは何とも言えないところがある、と自分は思っている。

あくまで「目安」は目安でしかなく、ここに書かれた「限度」を超えた株主を会場に収容したところで、総会決議に取消事由あり、となるわけでは全くないのだけれど、事務方にしてみれば、そうでなくても緊張感が張り詰めた総会の場で、”絡まれる”要素が増えた、というだけでもなかなか苦しいものがあるわけで・・・。

加えて、たまたま6月3週目の「金曜日」を選択した会社*1と、その前日の「木曜日」を選択した会社*2との間の「たった1日」で、キャパ900人分の差異が生まれるのかと思うと、何ともやるせない気分になってしまう。


当然ながら、今年の定時株主総会に関しては、「極力、株主に会場に来させない形で行うべき」というのが、春先からずっとお上が唱えてきた「方針」となっているし、つい先日も、その方針が確認されたところではある*3

だから、ちゃんとその方針を踏まえて準備を進めていれば、一日や二日の移行期間の「またぎ」など大したことではないだろう、と言われてしまいそうだが、もし、自分が当事者だったら、やはりこの日付の設定にはビビッドに反応してしまうだろうな、と思わずにはいられない。

そして同時に、総会の本当の”ヤマ”が来るのがちょうどその1週間後であることを考えると*4、それでもまだ「4週間刻み」ではなく「3週間刻み」だった分良かったのか? などと、余計なことも考えてしまったりして。

いずれにしても、「平時に向かう過程」ゆえの問題にこれからどう対処していくか、ということが、この先一カ月の課題となるわけで、筆者自身も、無い知恵を絞りつつ考えていければま、と思っているところである。

*1:前記日経紙の集計によると、6月19日に定時総会の開催を予定している会社は150社超に上る。

*2:これも前記日経紙の集計によると、6月18日に定時総会の開催を予定している会社は60社弱存在する。

*3:その「老婆心」が贔屓の引き倒しにならないことを願って・・・。 - 企業法務戦士の雑感 ~Season2~のエントリー参照。

*4:5月25日に開催を予定している会社は500社超、集中日の26日は700社超にも上る。

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