先週の後半くらいから既定路線になっていた「全都道府県での緊急事態宣言解除」が、遂に現実のものとなり、これで、いよいよ経済活動本格再開!とばかりに、市場などはかなり浮足立ったムードになっているようなのだけど・・・。
現実には、「売り上げが立ちさえすれば何とかなる」という一部の個人経営のお店を除き、飲食店や嗜好系の小売店に関しては、「営業再開後」の方が、オペレーション上も収支のやりくりの上でも、遥かに難しい舵取りを強いられる事業者が多いのではないかと思う。
営業を再開すれば当然仕入れも発生するし、人件費も光熱費もかかる。どんなに売り上げが落ちていても、もう雇用調整助成金を足しにすることはできない上に、店を開けているからには家主に賃料減免を求めるのもたやすいことではなくなってくる。
元々のビジネスモデルの中でどの程度の粗利を確保できているかにもよるだろうが、すぐに客の入りが「元通り」になることは到底見込めない以上、しばらくは”持ち出し”の状況で、人繰りにも苦労しながら営業を続けていかざるを得ないし、その過程でクラスタでも発生しようものなら、再び休業を余儀なくされて多大なロスを生じさせてしまう可能性すらある。
そもそも、4月に入ってから「休業」に舵を切った事業者の中には、「自粛」や「休業要請」の圧力に負けたから、というよりは、
「客が入らない状態で中途半端に営業を続けるより、完全に閉めてしまった方が傷を浅くできる」
と判断したのだろう、と思えるようなところも結構あったし*1、上場企業級のチェーン店同士の比較でいえば、緊急事態宣言下でも営業を続けていた事業者の方が、さっさと閉めてしまった事業者より、財務的に余力があるところが多かったようなところもあった。
だから、「早く元通りになれ!」と急く人たちの気持ちも分からんではないのだけれど、「無理やり何でもかんでも店を閉めさせる」のが決して好ましい結果を生まなかったのと同様に、今、このタイミングで、
「無理やり店を開けさせる」
というのも、(「感染再拡大防止」ということ以上に)事業者としての損得勘定の観点から、決して好ましい結果を生むものではない、ということは、ここで呟いておきたい*2。
そして、「正常化」を求めるバイアスは日増しに加速していくことになるのだろうし、元に戻った方が皆ハッピーになれるものはちゃんと戻す方向に向かわせた方が良いと思うのだけれど、「新しい稼ぎ方」にしても「新しい働き方」にしても、それらと表裏一体の「積もり積もった無駄のなくし方」にしても、せっかく一連の新型コロナ禍の過程で生まれてきたものがあるのだから、その萌芽を摘むような終わり方にはなってほしくないな、ということも申し上げておきたいところである。
定時株主総会一つとっても、決算手続きが遅れている一部の会社を除けば、”すっかり元通り”になってしまいそうな雰囲気が、続々と開示されている各社の招集通知からチラホラ漂って来たりもするわけで、当日になって、「何で今年はお土産を用意してなかったんだ!」とか、「何で今年株主との懇親会をやらなかったんだ!」みたいな罵声が(株主席からではなく)役員席から飛んで来るようなことにならないように、1か月、2か月前の緊迫した状況の中で「何が大事と判断してそうすべき、と決めたのか」ということは、しっかり共有され、この先も引き継がれてほしいものだな、と思わずにはいられない。
人間はいつの時代でも、忘れっぽい生き物だけに・・・。