どんな色でも輝けばそれでいい。

時が経つのはあっという間で、早くも春のクラシック戦線は大詰め。巡ってきた第82回オークス

桜花賞の時は、「ぬいぐるみは勝っても馬券は買わない」というシビアなファンの目に晒されていたのがウソのように、距離不安を囁かれながらも断トツの1番人気となったのは奇跡の白毛馬・ソダシだった。

好敵手・サトノレイナス日本ダービーに回る、というイレギュラーな状況では「消去法」という面もあったのだろうが、1番人気馬が7年連続連対中、ここ5年間のレースはすべて勝っている、という鉄板・オークスでこの人気となれば*1、何を言われようが勝利は揺るがない・・・はずだった。

自分は桜花賞からの流れで、今回、国枝厩舎の看板を一頭で背負い、鞍上をルメール騎手に替えて臨んできたアカイトリノムスメを再び軸に据えてはみたものの、やはりソダシを完全に捨てることはできず、頭の中をよぎった

「最後は金子真人HDの一人紅白歌合戦!!」

というよく分からんキャッチコピーが現実になることを信じて、買い目を選択。

そして、”ああ見えて気性難”なソダシが、吉田隼人騎手に導かれてスタートを決めた瞬間、

「先行抜け出しのソダシと、それを猛追するアカイトリ、ゴール前の激しい攻防の末、晴天に映える「黒、青袖、黄鋸歯形」の勝負服が2頭並んで駆け抜ける

という妄想に頭の中は支配されてしまっていた。

だが・・・

そんな安易な予想は容赦なく裏切るのがリアルな競馬の世界である。

最初に飛び出した武豊騎手のクールキャットに、川田将雅騎手のステラリアが激しく競りかけ、さらに団子状態で数頭の先行馬たちが続く。
2400mの長丁場にしてはいつになく”前”に重心がかかったまま進んでいく不思議な展開の中、やや折り合いを欠くような仕草を見せながら突っ込んでいく白馬の姿を見たときに、自分は嫌な予感しかしなかった。

案の定被せてくる馬もいて、道中はかなり澱みのない展開に。

それでも最後の直線で、ソダシの前の進路がきれいに開けたときは、「このまま押し切れるか・・・!?」と一瞬夢を見たのだが、前にいた馬たちのペースがガクッと落ち、代わって、後方に待機していた馬たちが続々と直線の主役に躍り出てきた時、奇跡の白毛馬の二冠の夢は儚く消えた。

結局、最後に前に出たのは、先週降り続いた雨の影響で少し重さも残っていた馬場でも34秒台の脚を使った馬たちで、特に後方から徐々に良い位置まで押し上げてきていたユーバーレーベンの差しは見事なまでにハマった。

さらに続いたのが、4コーナー10番手のアカイトリノムスメ

3着、4着には、4コーナーを12番手以降で回った人気薄の馬たちが名を連ね、ひそかに注目していた、青き衣をまとったアールドヴィーヴルが辛うじて5着。

かくして1番人気は飛び、16番人気の馬が3着に飛び込む、といういつにない大波乱が演出されることになってしまったのである。


2年続けて「無敗のオークス馬」の誕生を見届けることができなかった、という残念さこそあるものの、終わってみれば、レース後のミルコ・デムーロ騎手のインタビューしかり、生産者の声しかり、勝ったのが新冠ビッグレッドファーム出身ユーバーレーベンで良かったな、と思わせてくれるようなエピソードは実に多かった。

「白」でも「赤」でもない新しい主役。

色に例えようとすると、どうしても地味な赤と緑しか出てこないのがこのサラブレッドクラブ・ラフィアン所属馬の宿命だったりもするのだけれど、どんな「色」でも栄冠の下では輝く。そして派手さはなくても、その瞬間輝けばそれでいい・・・

そう思えたくらい、今年の優駿牝馬はよく整った舞台だった、ということも、最後に書き添えておくことにしたい。

*1:しかもこの5年で単勝2倍を切ったのは、アーモンドアイと昨年のデアリングタクトの2頭だけで、結果は言わずもがな、である。

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