日曜日になっても、数字上は高い水準のまま維持されている感染者数。さすがに街中の人出も少しずつ減ってきた印象はあるが、それでもあちこちにクラスタの芽は潜む「第3波」。
このまま官邸が関係各所に慮って、重い腰を上げないまま日を浪費すれば、日本人はこれまでになく悲しいクリスマスを迎えることにもなりかねないのだが、良識ある人々の声はなかなか届かない・・・。
ということで、どんよりした気分で(それでも依然としてはけない)仕事に追われつつ過ごした週末だったのだが、日曜日の午後目にした光景に、自分は希望の光を見た。
ここ3年くらいは、勝った時点では「クラシック当確!」と言いたくなるような馬が勝っているにもかかわらず、翌春のクラシック戦線に突入するとその馬がなぜか戴冠できない、というジンクスめいたレースになってしまっているが、今年のラッキーライラックの活躍を見ても、一昨年の2着馬がクロノジェネシスだった、ということを考えても、「最強牝馬と呼ばれるための登竜門」の一つであることは間違いないレースである。
そして、今年は、かたや北海道シリーズ連勝から東の重賞を制したソダシと、小倉シリーズ連勝から西の重賞をレコードタイムで制したメイケイエール、という3戦3勝(重賞2勝)馬同士の直接対決、しかも血統を遡るといずれも奇跡の白毛馬シラユキヒメに行きつく、というドラマのネタのような対決が実現したことで、例年以上に興味深さが増した。
同じ白毛馬の血筋を引きながら、一方は一見するとそれが分からない鹿毛、だがもう一方は、まさに奇跡を継承し続けるかのような見事な白毛。
牝馬限定のレースだけに、一昔前の昼メロに出てくる「煌びやかな良家のお嬢様」と「普通の家庭に育った女の子」、キャラクターも対照的だけど実は・・・みたいな妄想すら湧き上がってきたこのレース、白毛のソダシは予想通り1番人気の支持を受けたし、大外の枠を引いてしまった上に、父・ミッキーアイルで距離不安の指摘もあったメイケイエールも、人気を落としたものの3番人気。
間に割って入ったのは、これまた良血、サトノフラッグの全妹となるサトノレイナスで、こちらは、シラユキヒメ一族と長年のライバル関係にある侯爵家のご令嬢・・・といった役回りになるだろうか。
2歳のレースにしては、予想している時からいつになくワクワクしたのも、戦績以上にそれぞれの馬のバックグラウンドがドラマチックに見えたからだろう。
蓋を開けてみれば、人気を落としていた九州産馬ヨカヨカがこれまでのように結構なペースで逃げ*1、前に行ったソダシを、中団から後ろくらいでサトノレイナス、メイケイエールが追いかける、という展開に。
どのポジションを走っていても、帽子の色を見るまでもなく「あいつか!」と分かるのが白毛馬の特権で、自ずからカメラも彼女中心のアングルになる。
最後の直線、満を持して抜け出したソダシ、それを追いかけるメイケイエール、さらに内から鋭く脚を使ってきたサトノレイナス・・・。
ルメール騎手のアクションに応えて、もっともよい脚色で伸びたのは間違いなく良血・サトノレイナスで、「交わしたか?」と思った人も少なくなかったはず。
だが、写真判定の結果は、最後の最後のひと踏ん張り、僅かにハナの差で、ソダシの馬体が一歩先にゴール板を駆け抜けていた。
6番人気のゴールドシップ産駒、ユーバーレーベンが強烈な脚で突っ込んできたことで、「3強」の一角は崩れてしまったものの、メイケイエールも見せ場十分の4着。
さらに、先行勢総崩れの中で5着に粘ったヨカヨカも、デビューからの3連勝がただのラッキーではないことを見事に証明して見せた。
これで4連勝、と言っても、まだ2歳の時点での話。しかも、ここ数年の勝ち馬と比べても決して強さは光らない「辛勝」だったから、今の時点で「勝った馬が来年のクラシックの主役になれる」と言い切れる自信は全くない。
同じ日、このレースの後に海を渡ったところで行われた国際GⅠ・香港カップのノームコアの勝利の方が客観的にみればはるかにビッグニュースだし、価値も高いことは否定しない*2。
しかし、「無敗の三冠馬」が2頭も誕生した一年の終わりに、またしても「無敗」のままクラシック戦線に向かう資格のあるGⅠ馬の誕生を目撃できたのは、やはり幸せなことだと思う。
そして何より、あの美しき「白」が先頭でゴールを駆け抜ける、という慶事の先触れのような出来事は、深刻さが増す一方の今の世の中にとっては大きな薬になるような気がして・・・。
ただの迷信、ただの頑迷な妄想。どういわれようが知ったことではないが、自分は彼女の勝利に2021年につながる一筋の光を見出したような気がするし、だからこそ、必ず巡ってくる次の春には、その姿をもっと間近で見られる世の中になっていることを願うのみである。
最後に、今年も残すところあと2週。ハラハラさせられながらも、全ての日程を消化しながら開催はここまで来た。
もう何度も書いてきたことではあるが、それこそがファンにとっての一番の幸福だったのだ、ということも、ここで改めて強調しておきたい。