今のU-24世代の日本代表の試合を初めて見たのは、今から3年前のアジア大会の時だっただろうか。
他の参加国よりも一回り若いU-21の編成で挑みながらも、グループリーグを突破し、さらにトーナメントでも難敵の中東勢を撃破して決勝まで進んだチームはそれなりの注目を集めていた。
苦しみながら大会の中で成長を遂げていったチーム。
ディフェンスラインから中盤にかけて板倉滉、旗手怜央、三好康児、前線には上田綺世、前田大然といった選手たち。ベンチには三苫薫選手もいた。
いわば今のU-24の原型ともいえるようなチームで、決勝でも韓国相手に延長戦まで必死の戦いを繰り広げて見せ場は作ってくれた(結果は1-2で敗北)。
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とはいえ、あの時に「3年後」の今日を予感できたか?といえば、明確に「No」と言わざるを得ない。
2021年8月3日の夜、我々が目撃したのはそれくらい劇的に進化した彼らの姿だった。
オーバーエイジ枠で入った欧州の3人組(吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航)が守備でも攻撃の組み立てでも揺るぎない「背骨」として機能したのは間違いなく大きい。
2018年当時はA代表にいた堂安律、冨安健洋や、当時はU-19を主戦場にしていた久保健英といった世代の先頭を走っていた選手たちが満を持して合流したことでチームが大きく変わったのも間違いないだろう。
ただ、初戦の南アフリカ戦を見た時ですら、まだ「大丈夫か・・・?」と言いたくなるような状況だったチームが、ガチンコのチーム編成で臨んできたスペインを本当にあと一歩のところまで追いつめたこと、そしてその中で主役を演じたのが、決してそれまではこの世代の中で傑出した存在とまではいえなかった谷晃生選手であり、相馬勇紀選手であり、田中碧選手であり、さらにはU-21の時代からチームを支えてきた選手たちだった、ということは、何が何でも書き残しておかねばならないような気がする。
執拗なマークで十分な仕事をさせなかったバルセロナの至宝・ペドリ選手を後半途中でベンチに追いやり、延長戦に入ってからは右に左に快速を飛ばす前田選手の仕掛けや、左サイドからの切れ味鋭い相馬選手の突破が足の止まったスペイン守備陣を度々脅かす。
自分が物心ついてからの日本サッカーの歴史の中でも、強豪国相手に奮闘する代表チームの試合は何度か見てきたが、「虚をつく」でもなく「ひたすら耐え忍ぶ」でもない、真正面から堂々と渡り合って一進一退の攻防を120分間繰り広げる、そんな試合を見たのは本当に初めてだったような気がする。
延長後半残り5分というタイミングで、ようやく先制点を挙げたスペインU-23が、露骨なまでに時間稼ぎのボールキープをしてきた、というのも、これまで良いようにお客さんにされてきた欧州強豪国との対戦の歴史を振り返れば本当に信じられないことで、しかもそんな状況から再度ボールを奪い返して、全員攻撃で最後の最後まで敵陣に襲い掛かる、という光景を見て、最後の最後まで希望を失わなかった自分もいた。
結果的には0-1。
どんなに大会を通じて結果を出し成長を遂げ続けたチームでも、そしてその成長の過程に更なる伸びしろを感じさせるような状況だったとしても、負けてしまえばそこで終わってしまうのがトーナメントの宿命。
途中まで歓喜一色だった9年前と同様、さらにもう一つ負けてしまえば、メダル至上主義の五輪では「記録」すら残らなくなるリスクすら残っている*1。
ただ、現代日本サッカーが初めて「国際舞台」に姿を現した大会での「マイアミの奇跡」から、進んでは下がり、下がっては進み、を繰り返してきた四半世紀の一つの到達点が今日のスペイン戦だったと考えれば、残り1試合の結果がどうだろうと、未来には間違いなくつながると自分は思っている。
そして、一瞬だけベスト8の夢を見た2018年W杯のベルギー戦から3年経ち、誰もが「決勝」進出を間近な夢として頭の中に描けるところまで来た、ならばその次は・・・?という思いも当然出てくるわけで、その夢が「正夢」になるのが来年なのか、3年後なのか、はたまたもっともっと先の話なのかは分からないけれど、必然的に、その時を見届けるまでは長生きしないと・・・という思いに駆られた、ということもここに書き添えておくことにしたい。
*1:しかも運の悪いことに相手はグループリーグでも骨っぽさを存分に発揮していたあのメキシコである。かの国の人々の心の中に、地元開催の五輪で極東の島国にメダルをさらわれた悔しさの記憶がまだ眠っているのだとしたら、次もそう簡単にはいかないように思えてならない。