インフレもここに極まれり。

長く続いた新型コロナの混乱にウクライナ戦争、と様々な要因が相まって、世界中で物価上昇が続いている今日この頃。

ここ数日の記事だけ見ても、水曜日の朝刊に、

「国内の物価高が長期化してきた。6月の企業物価指数は9.2%上昇した。12カ月連続で5%を上回るのは約40年ぶりとなる。」(日本経済新聞2022年7月13日付朝刊・第1面、強調筆者、以下同じ)

と「オイルショック再来」を告げる記事が載ったかと思えば、今日の朝刊には、

労働省が13日発表した6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比の伸び率が9.1%だった。ガソリン高や堅調な雇用環境を背景に前月より伸びを高めた。米連邦準備理事会(FRB)が大幅な金融引き締めで沈静化を図る公算が大きくなっており、急激な利上げが景気後退を招く懸念も広がっている。」(日本経済新聞2022年7月14日付朝刊・第1面)

と、米国発で今後の景気を不安視する記事も出てきて、市場も連日戸惑いを隠せずにいる。

で、そんな中、今週、日本の北の方から飛び込んできたのが、今の世の中を反映するような、”超インフレ”のニュースである。

「12日、ノーザンホースパークで行われた「セレクトセール2022」の2日目当歳馬セリが終了し236頭が上場された。2日目の売上は128億9250万円で、当歳馬セリ最高を記録、落札率は95.3%だった。最高落札価格はシャンパンエニワンの2022(牡・ドゥラメンテ)3億2000万円でレッドホースが落札。2日間の総売り上げは257億6250万円となり、連日の売り上げ増で昨年からおおよそ32億円増で過去最高の売り上げを記録した。」
https://news.yahoo.co.jp/articles/1e7f65cdb8541a8b3d6b7a4ab7e8267256261c01

売り上げた額の数字は前年比約14.2%増、昨今の物価上昇率をも一回り上回る。

個別の結果を眺めれば、かつてのような6億円超の巨額ディールはさすがにない*1

だが、今年のセールでは、4億9500万円の「モシーン2021」を筆頭に、どの馬の落札額を眺めても、それなりの・・・と言うか、かなりの高額になっている。

高い落札率、そしてクラブ馬主から個人馬主まで、相応の金額で札を入れて落とした結果が、セールを“史上空前”の大盛り上がり大会にした

既に個人馬主として確固たる地位を築きつつある藤田晋氏は、昨年に続いて18頭の馬を落札しその半分以上(11頭)を1億円超の馬で固め打ちする、という偉業を再び成し遂げているし、それ以外にも、まだ未知数の新種牡馬の産駒などに惜しみなく資金を投入している馬主は多い。

日々の食材や生活雑貨の値上がりに頭を抱えて「家計防衛」に走る人々の世界とは全く逆の世界線がここにはある。

今年も観客が戻って昨年以上に良い調子をキープしているJRAとはいえ、今以上にレース数を増やすのは難しいし、いかにインフレ世相といえど「公営」競技である以上、賞金額を大幅に増やすのも難しいだろうな、と思う。

となれば、これだけ全体的に馬の価格が上がってしまうと、もはやセール参加者のほとんどが、”元”を取れずに終わってしまうのではないか・・・という気がしなくもないが、そんな俗世のちまちました話を振り切ってこそ馬主

本業は大丈夫なんかい?とか、そんな野暮なことは言うまい。

そこにいるのは、日銀の総裁も大喜びする、「インフレ許容度」が極限まで高い人々なのだ。

そして、そんな方々が切ってくれた身銭のおかげで、我々は毎週末、レベルの高い白熱した戦いに浸ることができるのだから、それを感謝せずして何をか、である。

変化の激しい浮世のこと、この2日間で”持ち主”が決まった馬たちがデビューする頃(特に当歳馬たちがデビューする頃)、果たしてのどかに競馬を楽しめるような世界がこの国にあるのかどうかは分からないが、今は、この日の主役となった225頭が、一頭でも多くレーシングプログラムに載る日が来ることをただ願うのみである。

*1:ちなみに、セレクトセールの歴代高額馬上位5頭の金額を合計すると28億3950万円となるが、GⅠ級の競走を制した馬は1頭も出ておらず、中央での賞金額を合算しても2億円をわずかに超える程度である。

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