混沌の先にあるもの。

またいつものように新しい年がやってきた。

さすがに50回近く、世に出てからも四半世紀にわたって同じイベントを繰り返していると感慨も薄れて様々なものがルーティン化してくるのだが、そうはいっても多少は気持ちをリセットして今年の展望を・・・と、日経新聞恒例の「占い」面を眺めた途端にガクッと来た。

「経営者が占う2023年」*1

元々「当たらない」のが定番になっているこの企画だが、新型コロナ禍が始まってからのここ数年、特に昨年に関して言えば、「まさかウクライナで戦争が始まるとは・・・」とか「まさか最後の最後で中国がゼロコロナでやらかすとは・・・」といった、誰もが予測できない事態が頻発したのは確かなので、多少の読み違いは仕方ない。

ただ今年に関しては、政治情勢から金融政策、物価動向等々、昨年暮れから今年につながる様々なリスク要因が既に顕出していて、どう楽観的なシナリオを描いても相当の覚悟はいるだろうな・・・というのが素人目にも明らかな状況。

それなのに、経営者20人中19名が日経平均の高値を30,000円超で予測するとは・・・。*2

この企画では、昨年も日経平均高値35,000円を予測した2名を筆頭に「32,000円以上」が大勢を占める、という大インフレ現象が起きていたのだが*3、それはあくまで「31年ぶり」「32年ぶり」といった高値更新のニュースに湧いていた2021年末の空気を踏まえてのこと。逆に、4年ぶりに下落トレンドで大納会を迎え、現時点ではそこから大きく浮上するような確たる材料もない22年末の状況で「高値30,000円」というのは、たとえ「初夢」だとしても夢を見すぎている気がする*4

おそらく今年これから起きるのは、騒がれているほどには上がらない物価と、予想をはるかに超えるペースでの金利上昇に円高基調の定着。

インフレ下での売り上げ増に期待して賃金コストを引き上げた会社は、中国発の世界不況に巻き込まれて軒並みP/Lを悪化させ、「ポスト・コロナ特需」で恩恵を受ける一部の業種(百貨店、航空等)を除けば、”コロナ景気”で蓄えた利益を全て吐き出す逆回転現象・・・。

どこかで軌道修正は図られるとしても、世界経済がひとたび悪いサイクルに入るとそう簡単には抜けられない、というのは、これまでの時代を生きてきた者なら散々経験していることで、少なくとも2023年いっぱいはそんなに景気の良い話を聞くことはないだろうな、と自分は思っている。

もちろん、世の中の景気は悪くても、逆風を付いて伸びるビジネスは必ず一つや二つは存在するものだし、むしろ競合企業がふるい落とされる逆風下こそ好機、と捉えて自社のポジションを強化しにいくくらいでないと、その次に来る時代の主役にはなれない。

そして大口であれ小口であれ、投資をする側としても、そういった地殻変動を見越して布石を打つには、皆が後ろ向きな感情に襲われている時の方がちょうどよかったりもする。

ただ、じわじわと衰え行くこの国の中から、そんな希望の光を放つプレーヤーが果たして現れるのか?

おそらく、ここからの一年、これまで以上に難しい”選択”、”選別”を強いられる機会は多くなるのは間違いないだろうけど、それすらも楽しめるような心の余裕は常に持ち続けていたい、と思っているところである。

*1:日本経済新聞2023年1月1日付朝刊・第31面

*2:ちなみに唯一、高値28,000円、安値22,000円という厳しめの予想をしているのは日本電産の小部博志社長。昨年、堅めの予想で”ニアピン”となったのがニトリHDの似鳥会長だったこととも合わせて眺めると、本当にサバイバルしてきた会社の経営者はやはり一味違うな、という思いを抱かせてくれる。

*3:www.nikkei.com

*4:おそらく、アンケートの回答者が「予想」を出した時点では、12月の唐突な日銀の政策転換とそれに伴う急落は織り込まれていなかった可能性も高いので、その分は割り引く必要はあるだろうが、それにしても・・・である。

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