常識は簡単に覆る。

日本では短い一週間、なれど、世界的には金融市場が大きくうねっていた中で、一日に二度も”あり得ない”ことが起きた。

一つ目は、この世界的な利上げラッシュの中で、わが国の中央銀行が下した「大規模緩和維持」の判断。

これまでの黒田総裁の強気すぎる振る舞いを見れば大方予想できた対応とはいえ、この期に及んで軌道修正の兆しすら見えないことには慄然とせざるを得なかった。

そして、二つ目。当然、市場が下した「円安加速」という判断に真正面から喧嘩を挑む、政府・日銀の「円買い」介入。

政府の関係者からは「投機的な動きへの断固たる措置」という言葉も発せられたようだが、今の日銀の動きを見れば、誰だって円を売って外貨を買う。

それを「投機」といわれても、市場関係者は当惑するばかりだろう。

結局何がしたいのか。

確かに、金利を引き上げればお金のめぐりが悪くなって景気も悪化する、というのがこれまでの常識で、今の日本が新型コロナ禍を引きずって企業投資も国民の消費も伸び悩んでいる、という前提認識に立つならば、黒田総裁の頑ななスタンスも支持される可能性はあるのかもしれない。

だが、今の世の中、本当にそうかといえば、お金があるところにはある、需要が伸びているところは伸びている。

前から言われているように、新型コロナ禍で業績が伸びた企業はそれなりにあるし、低迷していた会社の中にも、今年に入ってからの大幅な円安や資源高、企業物価上昇で一気に息を吹き返したところは多い。

個人にしても、新型コロナ禍でお金を使いたくても使えない、という状況が長く続いて、出口を失ったお金が手元に溜まり込んだ、という人は決して少なくないとされている。

世の中全体をならした統計では見えにくいかもしれないが、現場に近いところで見ていれば、”プチ”どころではないバブルの萌芽のような現象が至るところで起きていることにはすぐ気付くわけで、加えて、昨今報道されているような”景気刺激策”をこれから政府が打つようなことになれば、需要側はさらに盛り上がり、名実ともに本格的なバブルに突入することだろう。

それでもなお「緩和」路線にしがみつき続けるのか・・・。

今は米国でも欧州でも、教科書通り「繰り返される金利の引き上げが景気の低迷を招く」ということを所与の前提として様々なことが動いているが、2020年からの長いスパンでみると、少々利上げを繰り返したとしても直ちに悪影響を及ぼすとは限らない。

そして、今は先行きに懐疑的な世界中の市場も、いずれポジティブな動きがあれこれと目に見えて出てくればガラッと空気が変わり、むしろ”バブル状態”を後押しする方向に向かうことは容易に想像がつく。

にもかかわらず、引き締めの手は打たず、突出した円安へのもぐらたたきのような牽制だけで事を乗り切ろうとしているのが、悲しきかなこの日本という国。

常識に縛られすぎて、今本当にやるべきことをやっていない、その結果、”バブル再来”の恩恵に預かれる人が続出する一方で、”持たざる者”との格差は広がるばかり・・・。

変化し続けている世界では、これまでの「常識」など一瞬で吹き飛ぶ。だからこそ、その変化の潮目を見逃さず、きちんと世界の潮流に載っていくことが大事だと思うし、国の動きが鈍いなら個々人が自らの資産を守るために動く、ということも当然考えられる。

5年後、10年後どうなっているのか、なんてことを現時点で予測することは不可能だが、

「常識は常に覆る」

ということを肝に銘じた上で、日々しっかりと歩みを進めていければ、と思うところである。

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