これも過渡期の混乱に過ぎない、のなら良いのだけれど・・・。

今年も3月総会の季節となり、今週に入ってから次々と手元にいろいろな会社から定時株主総会の招集通知が届くようになった。

この3月総会は、昨年9月の改正会社法施行から6ヶ月が経過し「電子提供制度」が適用される最初の総会期、ということで注目して見ていたのだが、(ある程度覚悟していたとはいえ)蓋を開けてみれば、株主宛てに送られてくる書類のバリエーションの幅は想像以上に広かった

もちろん、自分自身、昨年から今年にかけて、いくつかの会社の総会に向けた準備状況をつぶさにフォローする立場ではあるので、どういう方向で進んでいるか、ということはおおよそ承知していたのではあるが、「フルセットデリバリー」の会社があるかと思えば「電子提供」に完全に舵を切って必要な情報はすべてウェブ上へ、という会社もある。多数を占めるその「中間形態」の会社を見ても、議案だけざっくり載せる会社から、一見これまで通り?と思わせるくらいよくできた”ダイジェスト版”を送ってくる会社まで、形は決して一つではない。

そして、それらが一個人株主としての自分の手元に一斉に集まると、まさにカオスな状況になる・・・。

多くの会社にとっては年に一度のビッグイベントで、しかもそれまでの長い歴史もある以上、「形」はそれぞれ自由であって良いとは思う。

ただ、送られてきた冊子上に見たい情報があるかと思えばなく、議決権行使書のQRコードを辿ってページを遷移してようやくたどり着く。しかも辿り着いた先にあるのは、古典的な「PDF」で、容量に限界のあるスマホでそれなりに重いファイルを次々とダウンロードしなければそれを開くことはできないし、スマホ画面で眺めるには何とも不便。かといってPCで開くためには、いちいちURLを打ち込まないといけないから、それはそれでまぁまぁ面倒な作業になり、結果、紙冊子とスマホの間を行ったり来たり。一通り情報を確認して議決権行使するまでの時間は、これまでの「紙オンリー」時代より格段にかかってしまった*1

特に厄介だったのが、一見すると紙冊子がデザインもレイアウトも立派に作られていて、法改正以前の運用と同レベルの情報が記載されているように見えるのに、よく見ると一部だけWeb掲載のPDFのみの掲載となっているようなパターン。

このパターンだと、議案のところまでは紙版にも完全に入っていて事業報告も冒頭のダイジェストのあたりまでは紙に入っているのに、その後のちょこちょこした記述が抜けている、というケースも多いので、電子提供されている資料を見ても途中までは「再放送」で二度手間となる。

せめて、昔のスタイルのように、Web版だけでも議案より前に事業報告載せといてくれないか、と思ったり、紙冊子にも記載している情報はそれとわかるようにマーキングしておいてくれないか、と思ったりもするのだが、中にいる方々のご苦労を考えると、そこまでお願いするのは酷というべきか。

そもそも、そこまで熱心に情報を探しに行く個人株主の数などたかが知れているとなれば、電子提供する「本物」と、株主に送付する「通知」に過ぎないダイジェスト版のフォーマットをいちいち変えるまでもない、と考える方が常識的な判断と言えるのかもしれないが・・・*2


普段は淡々としきたりを踏襲するが、ひとたび何か起これば徹底的な創意工夫を発揮するのが、この国の株主総会を支える人々である、ということを考えると、改正後1回、2回と回を重ねるたびに運用も洗練され、より情報を把握しやすいスタイルに変革されていくに違いない、と自分は信じている。

海外の企業がよくやっているように、メルアドを登録した人にIR情報を継続提供する仕組みを作れば、電子提供通知や議決権行使書のQRコードから辿るまでもなく、アップされたタイミングで資料を見に行くことは可能になるだろうし、見に行った先の情報がPDFファイルではなくWebページそのものに掲載されているのがスタンダードになる日もそう遠くないうちに訪れるはずだ

あとは、その間、これまで熱心に資料を読み込んで真面目に議決権を行使していた人々の”離反”をどこまで食い止められるか。

新型コロナ禍襲来時と同様に、またしても3月総会会社が”一番風呂”となったことについては同情を禁じ得ないところはあるのだが、個人株主の議決権行使率の変化等、ここで把握できる貴重なデータもいろいろとあると思うだけに、まずはこの一か月の行方を見定められれば、と思うところである。

*1:何だかんだ言っても、長年のノウハウが詰め込まれた「統合型招集通知」の冊子は、情報の一覧性という観点からはパーフェクトに近かったのだと思う。

*2:とはいえ、本来の参考書類+事業報告等と、ダイジェスト版を2種類用意するだけでも、現場の担当者にとっての負担は重くなるわけで、「企業の負担を軽くする」はずの法改正がかえって負担感を増していないか?という点は気になるところである。

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