止まらないこの流れ。

連休の合間に、GW前までの動き、ということで紹介した「スタンダード市場選択申請」の動き。

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3月14日に㈱マイネットが初めてこのタイプのリリースを出した時は、追随する会社が出てくるのはもう少し先の話かな、と思っていたのだが、GWが明けて一気に潮が動き始めた感じがする。

5月8日からの1週間で「スタンダード市場選択」を表明した現・プライム市場上場会社は実に10社以上

特にこの12日の金曜日には、”船に乗り遅れるな”とばかりに8社が立て続けに「スタンダード行き」を宣言する開示を行った。

これらの会社の中には、21年の時点で「計画書」を公表して流通時価総額増加の青写真を描いてみたものの、ベースとなる会社の業績が冴えない等の事情もあって、1年経っても2年経っても時価総額は上がらず(横ばいならまだマシな方でむしろ下がった会社すらある)、万策尽きて・・・という会社がある一方で、21年6月末時点ではプライム市場の上場維持基準に適合していたのに、今年に入ってから初めて”基準割れ”を開示し、そのまま「スタンダード市場選択」を表明した会社もいくつか存在する。

「選択理由」の中に出てくる「株価の向上は、当社の取組だけでは実現できない要素も多く含まれており」というフレーズや*1「株価形成は業績との相関だけではない」というフレーズ*2は、一定額以上の「流通時価総額」を上場維持の絶対条件とする東証の方針への一種の恨み節のように見えなくもないし、以下のような記載は、”苦渋の決断”の決定的な理由として、多少の表現の違いこそあれ、ほぼすべての会社に共通して登場する。

「今般の東京証券取引所の規則改正で上場維持基準に抵触した後の経過措置の取り扱いが明確化されたことによって、今後も継続してプライム市場の上場を維持した場合に上場廃止となるリスクが懸念されます。よって、現在の経営環境を踏まえて考慮した結果、スタンダード市場を選択し株主の皆様が継続して当社株式を保有・売買できる環境を確保することが重要と判断し、スタンダード市場の選択申請を行うこととしました。」(強調筆者)*3

人為的にコントロールすることが難しい(そもそも人為的に制御すること自体が本来はタブーとされる)「株価」に左右される基準により上場させる会社を選別する(かつ、それが実質的には唯一の選別基準として機能する)、という今回の東証の新ルールが果たして適切なものといえるのかどうかは、もう少し時間が経ってみないと評価できないところもあるだろう。

ただ、2021年の年末から2022年にかけての市場選択の時点で早々にプライム残留を断念した300社超の会社と合わせ、こういう形で市場を”追われる”会社が次々と出てくることを、ポジティブな感覚で受け止める感性を自分は持ち合わせていない。

そして、現時点で流通時価総額が70億円、80億円程度あるような会社であればまだしも、それが10億円、20億円台位にとどまっている会社の場合、スタンダード市場に行ってもなお、「上場維持基準」との戦いは続くわけで・・・*4

www.nikkei.com

理屈だけでは説明できない”気まぐれな市場”に身を委ねなければならない不合理さに直面している会社には同情を禁じ得ないが、今はせめてこの一連の過程の中で、株価対策からガバナンスまでそれぞれの会社が真剣に議論した内容が、いつか血肉となってそれぞれの会社の礎を築く日が来ることを願って、静かに見守りたいと思っているところである。

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