安住できる地などどこにもない。

多くの会社で決算期末を迎える3月。

個人投資家にとっては、配当を取るか、それとも配当取り狙いの投資家が殺到して値上がりしたところで益を確定させるか、その辺の駆け引きも出てくるタイミングなのだが、そんなささやかな思惑を吹き飛ばすかのように相場は連日荒れている。

まだ皆マスクをしていた今月上旬に突如報じられたシリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻。

”業界通”を名乗る人々は、当初「金融システム全体に影響するような話じゃない」とか「リーマンの時とは状況が全然違う」というようなことを呟いていたのだが、ロジック以上に素人心理が大きな影響を与えるのが”信用不安”というやつで、たちまち米国内でも連鎖、さらに欧州はクレディ・スイスにまで飛び火した。

各国の金融当局は必死になって不安心理をなだめようとしているのだが、当局がパフォーマンスをすればするほど、不安のマグマもたまっていくのがこの世界の常。そういえばリーマンの時も、そうやってじわじわと信用収縮が進み、長い不景気に陥ったのだよなぁ…ということを思い出す。

で、そうなると、当然相場も荒れる。

SVB破綻報道までは順調に年初来高値まで上げてきていた日経平均も、それ以降値を大きく切り下げ、今週初めには26,000円台にまで落ち込んだ。

海外の金融機関の破綻報道と金融当局者の発言が出るたびに世界中の市場が大きく揺れ動く、という展開の中では、個々の企業の業績の良し悪しなど大した材料にもならない。

ここ数日は、少し落ち着きつつある気配を見せているものの、月末を迎えるまでどう転ぶか分からない、というのが今の率直な印象である。

なぜ、こんな話をするかと言えば、間もなく迎える「3月期末」は、東証の市場区分見直しに伴う新市場の「上場維持基準」を満たせずにいる会社にとって、まさに大事なタイミングだからだ。

既に当ブログでも取り上げた通り*1、経過措置にもリミットが設けられることが確定的となった今、多くの会社にとっては2025年3月までの「基準日」の状況が一層大事になってくる。

ちょうど先週くらいから、12月期決算会社による「適合に向けた計画書」の開示が増えているのだが、どの会社も状況は芳しくない。

昨年末の時点でも市場環境は決して芳しいものではなかったから、流通時価総額が上がらないのはやむを得ないのだが、それに加えて昨年1年間の平均売買代金の指標で、2021年当時は満たしていた基準を割り込んで「追加対策」が必要となった会社も多数出てきている。

「売買代金」に関しては、株価が上がろうが下がろうが、その会社の株式について活発な取引が行われていれば満たせる基準なのだから、「企業努力が足りない」と言ってしまえばそれまでの話。

ただ、中には、振り付けされたとおりに機関設計変えてみました、ESGの取り組みもアピールしてみました、投資家向けの説明会もやってみました、それでも取引のボリュームは増えないし、時価総額も上がらない・・・という状況の会社はそれなりにあって、計画書を眺めながらやりきれない気持ちになる。

「適合」を宣言して降格圏から抜けていく会社はわずかしか存在しない状況で、新たに「計画書」を公表したプライム市場上場会社は今年に入ってからだけでも10社超*2

こうなってくると、「どこであきらめるか」を見極めるタイミングにも入ってくるわけで、先週14日には、とうとうプライム市場からスタンダード市場への移行を選択することを明らかにした会社も既に登場した。

www.nikkei.com

猶予期間終了まであと2年。

派手さはないが、堅実に経営を続けてきた自負のある会社にとっては忸怩たる思いもあるだろうが、今は少しでも市場環境が好転して、各社の担当者の涙ぐましい努力が報われることを*3願うばかりである。

*1:k-houmu-sensi2005.hatenablog.com

*2:内訳としては流通時価総額の基準割れと平均売買代金の基準割れがほぼ拮抗した状態となっている。

*3:といっても、上場維持基準が変わらない限り、市場環境が悪化すれば再び「転落」する可能性があることに変わりはないのであるが・・・。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html