後味が悪すぎた「株主総会2023」の幕切れ

まさにシーズン真っただ中の間は、振り返る暇もなかったのだが、今年も「6月総会」のシーズンが終わった。

メディア等で報じられていたとおり、年々増加基調にある株主提案が今年も多くの会社を翻弄したし、NCHDでの増配提案が可決されたり、壮絶な打ち合いの末、東洋建設のボードの過半数を提案株主側が握ったあたりが最大のヤマ場だっただろうか。

ただ、個人的に一番衝撃を受けたのは、6月総会の事実上の最終日、6月29日に起きた空港施設株式会社での「社長不再任」劇だった。

総会翌日からこの話題に飛びついた東洋経済が、臨時報告書で判明した賛成率等も踏まえて載せたのが↓の記事だが、まぁ何といったらよいのだろう・・・。
toyokeizai.net

一大騒動となった国土交通省航空局の「天下り介入」判明から独立検証委員会の報告を経て、満を持して新しい体制で・・・というところでこんな仕打ちに合うとは、ご本人も想像だにしていなかっただろうし、総会の翌週、配当金計算書とともに送られてきた小冊子*1の最初のページに、再任されなかった(前)社長がにこやかな表情で登場し、

「株主・投資家の皆様におかれましては、引き続きご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます」

と締めくくられた挨拶文(「社長メッセージ」)を載せておられているのを見ると、何とも言えない気持ちになる*2

もちろん、空港施設㈱のような株主構成の会社であれば、総会前日までの大株主の議決権行使の状況を見れば、総会当日に何が起きるかはほぼほぼ予想できるから、会社の側も社長の「討ち死」を前提とした緊急サクセッションプランは当然用意していただろうが、それまで経営計画もガバナンスも先頭に立ってリードしてきた社長が急にいなくなる、という事態が社員の業務遂行にもたらす影響は決して小さなものではないはずだ。

そう考えると、今回の大株主の”背信”は何と罪作りなことか・・・


アクティビストや機関投資家が活発に動くようになった結果、毎年同じような「台本」に乗っかるだけでは株主総会を乗り切れない状況も生まれている今の日本企業を見て、「これが本当のガバナンスだ」と悦に入っている人たちも決して少なくはないだろう。

だが、この日本という国の会社法の下、極めて強大な権限を与えられた「株主総会」という舞台を使って株主に思うが儘の「株主権の行使」をさせることが本当に絶対的な正義なのかどうか、ということは、しっかり見極める必要がある。

相当数の賛成票があれば会社の定款を変えることもできるし、今回の空港施設のように業務を執行する取締役をボードから押し出すことによって経営に介入することもできる。それでも取締役会がもっぱら社内取締役のみで構成されていた時代は、「株主総会」での株主権の行使(のプレッシャー)が良い意味での緊張感を生み、バランスを保つことにつながっていたのかもしれないが、ここ数年、取締役会の独立役員比率が高まり、それを通じた業務執行へのモニタリング機能も高まってきている状況の下で、さらに株主総会を通じたダイレクトな「経営介入」を株主側に認める論理的必然性があるのかどうか。

空港施設㈱の例は、あまりに極端で(背景事情も含めて)特殊なものだった、というほかないが、それ以外の会社でも大なり小なり起きている様々な出来事が毎年積み重なってくれば、株主総会と取締役会の権限分配見直し」という問題が噴き出す日もそう遠くないように思えてならないのである。

*1:自分はたまたまこの会社の株を持っていたのである・・・。

*2:会社からは https://www.afc.jp/wp/wp-content/uploads/media/a1fc1c239a1f33640e8f39027c8cde0e-1.pdfのようなリリースまで出されているが・・・。

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