傑出した者と同じ時代を生きたゆえの哀しさ。

長年年始の風物詩として定着している競走馬部門のJRA賞発表。

そして今年も年度代表馬はイクイノックスだった。

www.jra.go.jp

昨年の受賞に対しては、古馬たちとの比較で一言二言言いたいところもあったこの馬だが、こと今年(23年実績)に関して言えば、ドバイシーマクラシックに国内GⅠ3勝、しかも秋の2戦の圧倒的な勝ちっぷり・・・ということで、正直文句も言いようがない。

記者投票の結果も、295票中293票、リバティアイランドに2票譲ったのみで、昨年からさらに10票以上増やしての受賞、ということになった。

他の分野で言えば、最優秀2歳牡馬ジャンタルマンタル、288票)、最優秀3歳牝馬リバティアイランド、294票)、最優秀4歳以上牡馬(イクイノックス、294票)といった部門もまぁ文句は言えない結果、ということになるだろう。

個人的には、古馬混合のエリザベス女王杯を勝ったブレイディヴェーグがローズSでマスクトディーヴァ(秋華賞2着)に先着していれば、あるいはドウデュースが秋の最初の2戦でもう少しインパクトを残せていれば、それぞれの部門でもう少し票を集められていたんじゃないか、と思ったりもするが、それでも受賞馬との間で順位が逆転することはあり得ない・・・それくらい相手が悪かった。

一方、最優秀2歳牝馬アスコリピチェーノ 163票、レガレイラ 132票)、最優秀ダートホース(レモンポップ166票、ウシュバテソーロ126票)の各部門で票が割れたのも、まぁ理解できるところ。

かつてホープフルS勝馬が2年連続で最優秀2歳牡馬になっていたこともある(19年コントレイル、20年ダノンザキッド)ことを考えると、「牝馬」であるにもかかわらずこのレースを勝ったレガレイラが牝馬限定GⅠしか勝っていない馬に負けた、というのはいささか残念な気もするが、アスコルピチェーノの無敗&重賞2勝、という実績の重さにはさすがに勝てなかった、ということなのだろう。

レモンポップとウシュバテソーロは、「中央対地方・海外」という路線の違いが票に直結した形になったが、後者も「特別賞」で報われたことで一応バランスが取れている、ということになるだろうか*1

それ以外の部門に関して言えば、4歳以上牝馬と、短距離部門に関しては、前年に続いて層の薄さを感じる結果になってしまったな、という印象で、加えて、春のマイルGⅠタイトルを2つ持って行ったソングラインが最優秀4歳以上牝馬のタイトルまで取ってしまったことで、今年から設けられた「最優秀マイラー」部門の意義がちょっと霞んでしまったような気がする。

そして最後に「最優秀3歳牡馬」部門。

過去2年は「年度代表馬」に直結していたこの部門も、今年は三冠タイトル保持馬がきれいに分かれた上に「イクイノックス」という高すぎる壁(+イクイノックス世代の分厚さ)の前に世代を超えた存在感を示すことができず、何となく”敗者復活”的な雰囲気まで漂う結果となってしまった。

1 タスティエーラ 260票
2 ドゥレッツァ 28票
3 ソールオリエンス 5票
4 シャンパンカラー 1票
4 デルマソトガケ 1票

ダービー馬を受賞馬としたこの結果に異議を唱えるつもりはないが、皐月賞馬&三冠皆勤、しかもすべて3着以内、というソールオリエンスに僅か5票しか投じられなかった、というところに「どうせ古馬に混じれば勝負にならないんだから・・・」的な投票者の投げやり感が透けて見える気もして、ちょっと寂しく感じたのは自分だけだろうか*2

傑出した存在と比較されることほど苦しいことはない。

それが浮き彫りになってしまったのが今回のJRA賞だったように思うけど、古馬有力たちの引退で、また勢力図ががらりと変わりそうな2024年、1年後にまた違う景色が広がっていることを期待して、ここから始まるシーズンを見守ることにしたい。

*1:今年の大幅なダートレースの体系変更がJRA賞の行方にどう影響するか、というのは気になるところではあるが・・・、

*2:逆に三冠は菊花賞しか出ていなかったドゥレッツァに投じられた「28票」には、今年以降の活躍へのささやかな期待が込められているようにも感じられる。

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