三菱樹脂事件の元原告死去

大学に入って最初に受けた法律科目の一つが憲法だったのだが、判例百選を読んでも、どうしてもいくつかの判決に納得できなくて、やがて、それを所与のものとして受け入れている(ように見えた)教授の講義がつまらなく思えるようになり、間もなく法律科目の教室から遠ざかるようになってしまった、という苦い過去がある。


この三菱樹脂事件というのもその一つで、当時、元原告の方と同じ組織に属していた自分は、事案を読むだけで腹立たしい思いをしたものだった。


紆余曲折を経て、法律をしっかり勉強している今となっては、あの事件の最高裁判決は、憲法規定の私人間適用という論点について、規範としては一理あることを言っているのだということを、一応受け入れることができるようになったものの、事案に対する結論としては、やはり問題のある判決だという認識は変わらない*1


あの判決は、1960年代の世相を反映したものに過ぎない、と言う先生方もいるが、そこで示された「企業者の採用の自由」という発想が、現在でも形を変え、対象を変えて存続している採用差別の温床になっている、という重い事実を看過すべきではないと思う*2


それにしても、1963年に本採用拒否、1976年に差戻し審で和解、復職。
13年という歳月は、非常に重い。
故人のご冥福を祈りたい。

*1:一般論として間接適用説をとるにしても、認定事実に照らせば、会社側の上告を棄却すべき事案だったと思う。

*2:ここ何年か、採用選考の序盤のステップ(第一次、第二次面接など)に関わることが多いが、学生同士で目立った差が付かないような場合には、女性を優先的に上げるようにしている。後のステップに進めば進むほど「男尊女卑」的な面接官が増えるのは分かっているので、それでも一定の人数は残さざるを得ないくらい、大量に女性を送り込むという作戦。もっとも、最近ではそんな気を使わなくても、純粋な能力比較だけで女性が男性を圧倒する状況になってきているのだが。

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