大学に入って最初に受けた法律科目の一つが憲法だったのだが、判例百選を読んでも、どうしてもいくつかの判決に納得できなくて、やがて、それを所与のものとして受け入れている(ように見えた)教授の講義がつまらなく思えるようになり、間もなく法律科目の教室から遠ざかるようになってしまった、という苦い過去がある。
この三菱樹脂事件というのもその一つで、当時、元原告の方と同じ組織に属していた自分は、事案を読むだけで腹立たしい思いをしたものだった。
紆余曲折を経て、法律をしっかり勉強している今となっては、あの事件の最高裁判決は、憲法規定の私人間適用という論点について、規範としては一理あることを言っているのだということを、一応受け入れることができるようになったものの、事案に対する結論としては、やはり問題のある判決だという認識は変わらない*1。
あの判決は、1960年代の世相を反映したものに過ぎない、と言う先生方もいるが、そこで示された「企業者の採用の自由」という発想が、現在でも形を変え、対象を変えて存続している採用差別の温床になっている、という重い事実を看過すべきではないと思う*2。
それにしても、1963年に本採用拒否、1976年に差戻し審で和解、復職。
13年という歳月は、非常に重い。
故人のご冥福を祈りたい。