そしてまた一つ歴史は消える

三菱ケミカルホールディングスは8日、三菱樹脂を全額出資子会社化し、2008年4月に機能材料を手がける他のグループ3社と統合させると発表した。」(2007年2月9日付け朝刊・第13面)

三菱樹脂」といえば、「学生運動参加歴」をもって管理職候補で入社した社員の本採用者を拒否する、というおぞましい事件を起こしたことで有名な会社であるが、三菱グループの再編成の波の中で、半世紀以上にわたって引き継いできた看板を下ろすことになった。


2005年に元原告・高野氏の逝去が報じられた時のエントリーにも書いたが(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20050824/1124899434#tb)、三菱樹脂事件最高裁判決は、純粋な法規範としては一理あるものだとしても、事案の解決法としては最悪な部類に入るものだったと思う*1


そして、それ以上、“三菱”の名を冠した会社が、上記のようなおぞましい事件を起こしていたことを知って以来、自分は“三菱グループ”、ひいては財閥系の会社そのものに良いイメージを持っていない*2


奇しくも、この日公表された日経新聞の「就職人気ランキング」では、

5.三菱東京UFJ銀行
9.三菱商事
32.三菱重工業
38.三菱UFJ信託銀行
71.三菱地所

三菱グループ各社が上位を占めているが、「名門」の看板の裏にあるある種の息苦しさを考えると、銀のスプーンを加えて生まれてきた人々ならともかく、凡人が望んで入るようなところではないだろう、と思ったりもしている。


まぁ、自由より、縛の裏にあるステータスを求めてしまうのも、人間心理の一つなのは重々承知しているのであるが*3

*1:本採用前の試用期間、といっても、実際にはそれで本採用されないことなんてほとんどなかったはずで、実際には「採用の自由」が問題になった事案というより、「思想・信条による解雇」という側面が強い事案であったことを結論を導く上で考慮すべきであった。その後、この判決の規範が一人歩きしてしまっていることも、以前のエントリーに記したとおり。

*2:就職活動のときもこれらの会社は意図的に外した。もっとも、金融・商社といった業界自体をスポイルした就活だったので、残りの業界で客観的に選んだとしても財閥系の会社が出てくる余地はなかったと思うが。

*3:ちなみに、就職人気ランキング首位の「全日空」。労務管理が業務の半分以上の比重を占める会社で「仕事がおもしろそうである 66.7%」って言ってもねぇ・・・。学生の皆さん。業界研究はしっかりしましょうね(笑)。

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