マリーンズがプレーオフの第1ステージを突破した。
遠く離れた地にいた自分は、
東京にいたら見られたかもしれないテレビ中継とも無縁に過ごし、
夜のニュースでハイライトを見ただけだったが、
それでも、暑苦しいほどの白と黒に染まったスタンドの熱狂は伝わってきた。
川崎から千葉マリンに「ロッテオリオンズ」がやってきた時、
まだ高校生だった自分は、
初の地元でのプロ野球公式戦を見るために、
胸を高鳴らせて球場に駆けつけた。
自分の記憶では、ロッテの先発が小宮山。
相手はオリックスで、先発は佐藤義則、ではなかったか・・・。
発表された観衆は、大入り満員の3万人。
だが、その日の試合は、確か負けたような気がする。
やがて、川崎球場に負けず劣らず、
マリンスタジアムにも閑古鳥が住み着いた。
そして、バレンタイン監督が指揮をとった95年を除けば、
その後のチームの戦績にもさほど見るべきものはなかった。
バレンタインは一年で首を切られ、
伊良部は醜態を晒してアメリカへ高飛びし、
挙句の果てに悪夢の連敗記録を積み重ねた。
そんな悲しい経験を経て、ライトスタンドのファンは次第に結束を強め、
無機質なスタンドは、
いつしか、地元の気のいい兄ちゃんたちの集会場になっていったが、
それでも、野鳥の会に頼めば、バックグラウンドから目視でも
簡単に数を数えられるような、そんな日が続いていた。
そんなマリンスタジアムが、
一色に塗り固められ、熱狂に浸る時が来るなんて、
自分には想像もできなかった。
ブラウン管の向こうの現実を見つめながら、
半分は現実を受け入れられずにいる自分。
タイガースとマリーンズの日本シリーズが実現したら、
一体自分はどちらを応援したらいいんだろう、と、
今まで願い続けていたにもかかわらず、
一度も真剣に考えたことのなかった難題に直面して、
頭を抱えながら、それでももう少し夢を見させてほしい、
と願っている自分がいる。