NBL824号

NBLの新年号。
毎年恒例の「ビジネスローの展望」に加え、
今年は「裁判所専門部の事件処理の実情」として、
各専門部裁判官による“レポート”が掲載されている。


企画モノには定評のあるNBL誌だけあって、
コンパクトにまとまっており、
かつ短い中にも各専門部の個性がうかがえて興味深い。


さて、今号の巻頭言を書かれているのは、独禁法の白石教授*1


白石教授は、
「法律や政令・規則の条文を徹底的に読み込むこと」の重要性を説かれ、
次のように述べられる。

「現代語による最近の法令には、よく読めば、かなりの情報が盛り込まれている。インサイダーでない者が、多くの情報を自力で仕入れ、その上のレベルを求めて関係者と対峙することが十分に可能となった。」
「ビジネスローでは条文よりも運用が大事だ、と言われることがあるが、運用とは、条文に表現された骨格に肉付けをしていく作業なのであり、条文を精確に理解して初めて、運用をも理解できるはずである。」(以上、白石・前掲1頁)

“情報量”が多すぎるのも実は考えものなのだが*2
それを差し引いても、
白石教授が言われていることは、
実務に携わる者であっても、常に肝に銘じておかねばならない中身であろう。


「時間がない」ことを言い訳に、
うわべだけの“実務知識”に頼ったがために、
思わぬところで落とし穴に嵌った苦い経験もある*3


省令、規則レベルまでしっかりと法令の条文を読み込む。
判例、裁判例はもちろんのこと、
公権解釈、ガイドライン等々に至るまで、
しっかりと原資料にあたる。


切羽詰った時は、どうしても安易な方向に逃げたくなるものだが、
会社の中の“最後の砦”たる法務担当者としては、
ここでスルーするわけにはいかない・・・。


なお、白石教授のコメントの最終段落は、
白石先生ならではのコメントであり、
師の切れ味鋭い講義を思い起こさせていただくには十分であった・・・*4

*1:白石忠志「一次資料の基盤の上に」NBL824号1頁(2006年)

*2:情報量が多いこと自体は問題ないのだが、それが的確に整理された形で規定されていないところに問題がある・・・。

*3:いかに充実した実務書といえど、あらゆる条文の適用を踏まえた“Case”を想定して書かれているわけではない。現実に直面した事例が、想定されている“Case”と微妙にずれている場合に、その“ズレ”が“Case”において全く前提とされていない条文との抵触を招くことがあり、そこに大きな落とし穴が存在する。

*4:もちろん雑誌に掲載される文章だけにオブラートには包まれておりますが・・・。

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