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「時の問題」で、「新しい労働法制の課題」というタイムリートピックが
取り上げられていたので*1、
これまでの記事とまとめて感想を書こうと思っていたのだが、
残念ながら暇がない・・・。
既に、厚生労働省サイドからいくつかのアドバルーンも
上がってきているこのテーマ。
“労使ともに反対姿勢”という状況の下着地点を探る、
という作業はいかにも厳しく、
しばらくは平行線状態が続くようにも思われる。
結論が出る前に、何らかのコメントを付せるようにしたいものだ(苦笑)。
その他、タイムリーなトピックとしては、
碓井光明教授による最大判平成18年3月1日(旭川市国民保険料事件)
へのコメントが掲載されている*2。
碓井教授は、最後に、
政府管掌保険の独立法人への移管が、
“健康保険料への憲法84条趣旨支配説”にいかなる影響を与えるのか、
という争点を提起されているが*3、
社会保険に限らず、“官から民へ”の流れの中で、
従来憲法、行政法の範疇で語られていた問題が、
“宙ぶらりん”になることは他にも考えられるわけで、
いろいろと考えていく上の素材としては、結構面白いと思う。
あと、今号の最大の目玉、といっても良いのが、
長島安治弁護士の特別寄稿*4。
まだ日本が貧しく、アジアの弱小経済国だった時代に法曹を志し、
“渉外”という分野を切り拓いた老弁護士の言葉の重みや如何に*5。
もっとも、この言葉を贈られた“未来の法曹”たちにとって、
今の時代環境が真に「恵まれた」ものなのかどうか、は、
あと50年経たないと分からないのであるが。
以下、連載記事の中から。
エンジョイ!行政法
どうやら隔月連載だったようで、今月号が第2回。
土井真一京大教授をゲストに「憲法と行政法の関係」を論じる本稿、
もはや『法学教室』掲載記事のレベルを超えている(笑)。
もっとも、どこまで話の真髄を理解できるかは別として、
読み物としては面白いのは間違いないのであるが。
新労働法講義・第3回*6
「整理解雇」という大論点の回でありながら、
淡々と筆を進めていかれるあたり、荒木先生らしいなぁ・・・と思いつつ、
「年少者の帰郷旅費」(労基法64条)の規定だとか、
「使用者はあらかじめ第三者と謀り、労働者の就労を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分もしくは労働組合運動に関する通信をし、又は退職証明書に秘密の記号を記入してはならない」(労基法22条4項)*7
といったマニアックな規定に萌えてみる(笑)。
個人的には「変更解約告知」で丸々一回分費やしていただくことを
密かに期待しているのであるが・・・。
憲法基本判例を読み直す*8
あの有名な「北方ジャーナル事件」*9って、
仮処分決定ではなくて、その後の損害賠償請求の本訴だったんだなぁ・・・
と妙なところで感心。
あと、無審尋で差止めが認められた背景に、
「本件仮処分で問題となった記事より前に、数次にわたってYを含む公職の候補者に関する記事について頒布・販売等禁止の仮処分命令が発せられ、特にYに関する本件類似の記事を掲載した1978年(昭和53)年11月号の頒布・販売等禁止の仮処分については、「日時の余裕を置いて書面による反論の機会」が与えられていたという事情があった。」(野坂・前掲100頁)
というのも興味深く(恐るべし北方ジャーナル(笑))、
同時に、そのような特殊事案の規範が一人歩きすることの怖さも感じた次第。
もっとも、それ以降に事前差し止めが問題になった事案も、
その多くは、発行者側が出そうとする情報の“要保護性”に
疑義があるものが多かったりするがゆえに、
上の規範が根強く生き残っているのかもしれない。
以上、今回の読後感想は、手抜き御免・・・。
*1:山川隆一「新しい労働契約法制を考える」6頁。水町勇一郎「新しい労働時間制度を考える」13頁。
*2:碓井光明「財政法学の視点よりみた国民健康保険料」19頁。
*4:長島安治「恵まれた者の責務」30頁。
*5:余談だが、筆者自身も以前、長島弁護士と同世代の先生にお世話になったことがあるが、戦後の新しい国の草創期から法曹界を支えてこられた先生方の気高さ、志の高さは、いくら歳月を経ても変わらないものだと、敬服させられたものである。
*6:荒木尚志「雇用保障と雇用・労使関係システム(2)」84頁。
*7:「秘密の記号」って表現がワクワクものなのだが・・・(笑)。
*8:野坂泰司「名誉侵害と裁判所による表現行為の事前差止め」92頁