以前のエントリーでも紹介した青木博通弁理士の本を入手。
知的財産権としてのブランドとデザイン (21世紀COE知的財産研究叢書)
- 作者: 青木博通
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
定価7,140円は決して安い値段ではないが、この本に収められているトピック、特に第1章「商標の現代的諸問題」に収められている一つひとつのトピックは、商標だの不競法だの、といった“非技術的”知財を扱う実務担当者にとっては極めて重要なものばかりである。
そして、本書では、そのようなトピックについて、十分過ぎるほどの紙幅が割かれ、審判決例や学説から諸外国の法制度まで、豊富な実例が紹介されている*1。
ゆえに、この分野に携わる実務者であれば、本書を避けて通ることはできない。
冒頭のはしがきでは、本書が著者の過去の論文(「CIPICジャーナル」や「知財管理」等に掲載されたものが多い)の再録本であることがアナウンスされているが、実際に読み進めていくと、正露丸事件や赤毛のアン事件、といった最新の裁判例や、連邦商標法(稀釈化防止法)の改正も2006年施行分まできちんと盛り込まれていることが分かる。
定評のある商標法の概説書の多くが、最近改版されていないこともあって、このタイムリーさも本書の魅力のひとつになっているのは言うまでもない。
このように、本書は第一線で活躍されている実務家の先生が書かれただけあって、絶妙な素材選択、端的な問題提起、そして読みやすい文章、という“三拍子”が揃った良書であり、実務に携わっている人間にとっては申し分ない文献だと思われる。
残念ながら、筆者が確認する限り、都内の大規模書店においてさえ、本書が平積みになっている光景にはお目にかかることができていないし*2、そのことは本来、ほとんどの企業にとって、知財の“コア”たりえるはずの商標や不競法への人々の関心の薄さ(浅さ)を反映しているようで、少々寂しい。
だが、だからといって、本書の価値は何ら減殺されるものではない。
職場で一冊、手元に一冊。それだけの価値はある、筆者はそう思っている。