ロー&エコの時代?

今日の日経紙で発表されていた『第50回日経・経済図書文化賞』受賞作の中に、東京大学・柳川准教授のこの一冊があった。


法と企業行動の経済分析

法と企業行動の経済分析


一年ほど前に、本屋の一角に積まれていたのをスルーした記憶があるが、これで再び特設コーナー*1に返り咲くことだろうし、また手に取ってみようかと思う。


鈴村興太郎教授の紹介文の中では、

「この分野の教科書が数多く出版されている現在でも、法学研究者と経済学研究者の交流と交錯は重層的に深まったようには思われない。」
「それだけに、「法律が企業行動にどのような影響を与え、それが経済全体にどのようなインパクトを持っているのか、そして、それらを考えた場合どのような法律が望ましいのかについて経済理論を用いて検討した」本書の登場は、日本の法と経済学の今後の発展に有益だと考える」

と、現状に対する厳しい視線が向けられているのだが、ここ数年、法学分野の若手研究者の間にも、従来の“法と経済学”を超えた研究業績がかなり見かけられるようになってきていることからすれば、あと何年もしないうちに、経済学的手法を使った法制度分析、そしてそこから導かれる法解釈手法が学界を席捲するようになったとしても、決して不思議ではない。


そして、その時になれば、上記のようなお言葉も、「そんな時代もあったなぁ・・・」と懐かしく振り返られることになるのではないかと思う。


もちろん、ベタな実務サイドの人間にしてみれば、経済学が前提としているモデルも*2、法学が前提としているモデル(のようなもの?)も*3、所詮現実とイコールではないのであって、理論的に華やかな論争が繰り広げられればられるほど、空しさを感じたりもするのであるが。


筆者としては、とりあえず手近なミクロの世界での「法」と「経済」の対話*4を促進することに注力することにしたい。

*1:書評欄に掲載された書籍を並べるコーナー。近頃の大書店には大抵設けられている。

*2:最近(でもない?)では心理学や政治過程論等との融合も図られているようであるが、最終的には理論的な衣をかぶせた個々の学者の「思想」の発露に過ぎないんじゃないか(笑)、というものを見かけることがままあり。

*3:上手く説明できないが、何となく法律家が前提としているもの(苦笑)。

*4:こう書くと大げさだが、要は法律をかじった人間と、経済学をかじった人間との、ちょっとした世間話から発展するささやかな対立をどうするか、という話である(脱力・・・)。どっちもまともに勉強してきた人間は少数派に過ぎない、という実態がある上に、圧倒的な力を持つ「社内政治学」の前にはなす術がない、という弱点を抱えているので、つまらない喧嘩をするより仲良くした方が良いに決まっているのだが、そうもいかないのが世の常である。

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