快挙の裏側にある不安

フィギュアスケート4大陸選手権。


結果はあえてここで書くまでもなく、男子・高橋大輔選手、女子・浅田真央選手、と日本勢が揃って表彰台の頂点に立つ爽快な展開。


特に、男子シングルの高橋大輔選手は、SPで鮮やかなステップを踏んで観客を魅了したかと思えば、フリーでは4回転ジャンプ2度成功、といいこと尽くめで、スコアだけ見れば、あのプルシェンコをも超えてしまう、世界最高得点を叩き出した。


・・・・と、ここまで書けば何も問題はなさそうなのだが、冷静に考えると、これはあくまでも「4大陸選手権」なわけで、大陸が4つ、といってもヨーロッパは入ってないし、米国から送り込まれた選手の格も微妙なところ。


我らが日本にしても、かつて本田武史選手や村主章枝選手が輝かしい戦績を残しているとはいえ、ここ数年は、世界選手権の代表に漏れた選手達が派遣される、いわば銀盤の“残念ダービー”になっていたのは記憶に新しいところである。


今回、日本スケート連盟が女子トップ2&高橋大輔という大物を送り込んだ理由は良く分からない(スポンサーへの配慮か、それとも選手の調整方法を変えたかったのか?)のだが、最終グループの顔ぶれを見る限り、「勝たねばならない」大会だったのは間違いないところで、“アベック優勝”といっても、関係者はそんなには喜べないはずだ。


各種ニュースの見出しを見ると、来月の世界選手権に“弾み”という論調で取り上げているものが多いが、どんな名選手にもピークの波というのはあるもので、浅田選手はともかく*1、“プルシェンコ超え”を果たしてしまった高橋選手に、果たして来月までお釣りが残っているのか・・・?という疑念を筆者は晴らせずにいる。


フィギュアスケートのような個人競技、かつ採点競技では、「ライバルに手の内を見せる」かどうか、なんてことが問題になることは早々ないだろうし(特にシーズン終盤となったこの時期ともなれば)、国際審判に対して演技の魅力と「格」をアピールしておくことは決してマイナスではないと思うが、どんなスポーツでも、大きな大会に向けたピーキングで欧米勢の後塵を拝してきたこれまでの歴史を考えると、ここで良い結果を残したからこそ、この先、各選手と連盟の力量が試されることになろう。


なお、もう一つ苦言を呈すなら、この大会の女子シングルに村主章枝選手は出るべきではなかった、と思う。


日本選手権4位、というポジションゆえに、派遣枠に入ってきてしまうのはやむを得ないにしても、かつて何度も栄冠を勝ち取ったこの大会に彼女のモチベーションを駆り立てるものがあったのか、は疑問のあるところで、最後まで精彩を欠いていた演技(結局10位に低迷)を見る限り、調整も決して十分でなかったのでは、と思ってしまう。


審判やスポンサーへのアピールのためなら、中野友加里選手を出す手もあっただろうし、新しい才能に経験を積ませるためなら、日本選手権5位の鈴木明子選手、6位の武田奈也選手、といったところに切符を上げても良かったんじゃないか、と。


可能性は僅かでも、もう一度華やかな舞台で輝く姿を見たいと思うからこそ、今シーズンは静かに休んでいて欲しかった。そう思うのは筆者だけだろうか?

*1:昨年の不安定さを脱却して上昇基調にある、という説明がしっくり来るから。

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html