昨年末(91勝)の時点で、いずれは・・・と思える状況ではあったのだが、こうもあっさり達成されてしまうと末恐ろしくなる。
「中央競馬の三浦皇成騎手(19、美浦・河野通文厩舎)が7日の東京競馬で、史上最速の通算100勝に到達した。デビューから11ヶ月と7日での到達は、武豊騎手(39、栗東・フリー)を抜く新記録だ。」
(日本経済新聞2009年2月8日付朝刊・第29面)
一般のメディアでも話題になり始めた昨年の夏頃から、注意して見るようにしているのだが、道中や最後のコーナーでのポジション取り、ゴール前の追い方、と、はっきり言ってモノが違う印象で、野元記者がコメントしているような、「減量特典が消える」ことによる「2年目のジンクス」とはおそらく無縁なのではないかと思う。
ここ20年ほどの間に、新人時代から傑出した成績を上げていたジョッキーと言えば、武豊騎手、福永祐一騎手といった名前が挙がるが、いずれも競馬サークルの2世。
ここ数年で「最多勝利新人騎手」の要件を満たした他の騎手の名前を見ても、武幸四郎、池添謙一、藤岡祐介、とデビュー当時から恵まれた環境にあった「2世」がほとんどで、唯一の例外である北村宏司騎手にしても、所属は当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった藤沢和雄厩舎だったから、それだけでも三浦皇成騎手の実績の凄さが分かるというものだ。
師匠である河野調教師のバックアップもさることながら、5歳の頃から騎手を目指してトレーニングを積んできた、という逸話に象徴される彼自身の努力と、それを結果に結びつけることができる資質、そして、インタビューの受け答え等に垣間見える強いプロ意識と成熟した感性が、この快進撃を支えているのは間違いない。
長らく明るい話題がなかった競馬界に舞い降りた稀代のスター候補生にとって、怖いのは事故だけ。それさえなければ、今年の終わりごろには、「100勝」という数字に驚かされていたのが恥ずかしくなるくらいの幾多ものの勲章を彼が手中に収めているのは確実だろう。
筆者としては、競馬界のこれ以上の衰退を食い止めるためにも、この一年を通じての三浦騎手のコンスタントな活躍を期待するのみである。