年頭に「審判制度廃止か!?」というアドバルーンを打ち上げておきながら*1、結局、元サヤに戻る形で法案化されそうな気配である。
「自民党独占禁止法調査会(独禁調)は12日、課徴金の適用範囲の拡大などを盛り込んだ独占禁止法の改正案を了承した。独禁法違反で下した行政処分の是非を公正取引委員会自らが判断する審判制度の見直しは「2009年度中に見直す」との付則を設け、事実上先送りする。」(日本経済新聞2009年2月12日付夕刊・第2面)
そこまでして規制強化を図りたいのか・・・、とため息を付きたくなる動きだが、事前審判と司法救済が混在するような「審判制度改革」を行ったところで、また頭を悩ませる新しい問題が出てくるのは確実だから、むしろこの方が良いのかもしれない(苦笑)と思ったりもする。
もっとも、このグダグダな政治情勢が続く限り、「審判制度見直し」という厄介なお荷物をそぎ落として改正法案を提出したとしても、そう簡単に成立までたどり着くことはできないだろうし、そもそもこの“未曾有の”不況期に、独禁法の規制を強化するのはいかがなものか、という考え方もありうる。
「景気が悪い時は、カルテルを認めてもいいじゃないか!」
というのはさすがに暴論だとしても*2、これまで公取委が掲げてきた錦の御旗である、“国際水準に合わせた規制強化”という前提は今後危うくなる可能性があるわけで*3、そういう状況になった時に、我が国の独禁当局や政治部門がどのようなポリシーで事を進めるのが妥当なのか、良く考えておく必要があるだろう。
本来、国の競争政策と密接に関係するはずの独禁法が、あたかも「消費者保護法」であったり*4、「中小企業保護法」*5であるかのように理解されがちなこの国においては、そこまで冷静な議論が展開されることを期待するのは難しいのかもしれないけれど・・・*6。
*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20090106/1231263544
*2:需要者の購買意欲が著しく減少している今の状況では、カルテルで値崩れを防いだところで、製品が売れないことに変わりはないだろう。
*3:欧州はともかく、“ニューディール再び”ムードの米国が反トラスト法を“止める”方向にシフトしないとは限らない。1930年代の前歴もあることだし。
*4:そのような側面があることは否定しないが。
*5:これは明らかに法の趣旨を逸脱している。
*6:一番の問題は、肥大化した公取委の官僚的体質(政策のベクトルをそうたやすくは逆方向に向けられない)にあるのかもしれない。