あれよあれよと言う間に・・・

鳩山連立政権が誕生して以降、常識人には理解できないようなエキサイティングな発言やら施策やらが次々と飛び出してきて、毎朝、新聞を見るのが楽しみで仕方ないのだが(苦笑)、この記事にはいい意味で驚かされた。

「政府は9日、企業が公正取引委員会の課徴金納付命令などの処分に不服を申し立てる審判制度を廃止し、東京地方裁判所に機能を移管すると発表した。処分の事前手続きに企業の社員も立ち会えるなど透明性も高める。企業の不服申し立てに対する中立性を維持するのが狙いで、来年の通常国会独占禁止法の改正案を提出する。」(日本経済新聞2009年12月10日付朝刊・第5面)

日経の1面に掲載されたアドバルーン記事を「サプライズ」と本ブログで評したのは、ほんの1ヶ月前の話*1


そこからどういうふうに話が進んだのかは分からないが、あっという間にこの日の発表に至った。


今の政治状況を考えると、通常国会で法案を出してもすんなり通るかどうかはまだ予断を許さないのだが、現実に法改正に反映されるにはまだまだ時間がかかると思われていた“産業界の要望”がこんなにあっさりと通るとは、要望していた側でも想像していなかったのではなかろうか。


なお、処分前の手続きに関し、

「処分企業の社員を「手続き管理官」として同席させる」

制度や、

「全ての証拠を原則開示対象にする」

という制度は、手続きの透明性と、その後争う上での処分企業側の防御権を確保するための手段としては、大きな意味を持つことだろう*2


さすがに、「調査時の弁護士立ち会い」については現段階での導入は見送られたようだが、社内弁護士等をうまく活用すれば、正式な処分が出る前の早い段階からある程度の防御体制を整えることも可能になるし、逆に、明らかに会社に理がないような場合に、白旗を上げるタイミングも早目に見極めることができる。



なお、公取委は、相変わらず「独禁法違反の判断には経済と法律の専門的な知見が必要」などと主張していたようで、

「専門性の高い裁判官を養成する」

ということが、今回の法改正にあたっても“条件”になっているようだが、そもそも一部の事件で、経済学的側面から見て必ずしもセンスがいいとはいえない判断を公取委が出していたことが今回の改正の呼び水になっていたわけだし、もし本当にそういった側面からの判断が要請されるのであれば、当事者たる公取委(国)の側で、

「知識の乏しい裁判官でも理解できるような(&説得できるような)主張書面や証拠」

を出すのが筋だろう。


知財高裁の設置の際にも議論されたことではあるが、訴訟を進めるのはあくまで訴訟「当事者」なのだから、裁判官を特定分野に精通させることに大きな意味があるとは思えない*3


どうしても心配なら、公取委で経験を積んだ人間(プロパーの公取委職員だけでなく、公取委出向経験のある弁護士なんぞを起用しても面白いかもしれない)を調査官として迎え入れることによっても目的は達成されるんじゃないだろうか。


ここ数年、審判部の機能強化を図ってきた公取委としては、今回の政府方針は大変心外なものだろうけど、“捜査から裁判まで”全部一人でやろうとしたが故に、公取委の組織が肥大化の傾向にあったのも否めないのであって、ここは「公取委を審査や摘発に注力させる」という政府方針の方に理があるように思えてならないのである。


なお、この記事の末尾には、「全国消費者団体連絡会」の

「審判制度は公取委が市場を見張る力の源泉。公取委の監視能力が弱くなってしまうのでは。」

というコメントも掲載されている。


だが、審判制度がなくなったからといって、公取委の権限が直ちに弱まるとは到底考えられず*4、「監視能力が弱くなる」という批判も的を射たものとは思えない。


昔からの制度をいじるときに、こういった反発の声が出てくるのは古今東西共通だとは思うが、これから先、根拠の疑わしい“ノイズ”のせいで話がひっくりされたりしないように、立法担当者には十分慎重に対処していただきたいものだと思う*5

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20091105/1257604439

*2:そもそも、処分内容や証拠の説明を、これまで処分される企業の側できちんと受けられていなかったのだとすれば、それ自体が論外と言うべき話なのだが・・・。

*3:裁判官が○○を理解していないから負けたんだ、的な言い訳は、自分の出した書面やその中身の説明が不十分であったことを棚に上げた、小学生レベルの言い訳だと思う。

*4:調査権限(それも行政調査だけではなく、犯則調査、告発権限を持っている時点で、「市場を見張る」組織としては十分すぎるほどの権限を与えられている、と言えるだろう。

*5:お得意の“政治主導”で(笑)。

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