路線の違い

実に春・秋合わせて「141回」の伝統を誇る天皇賞


特に春の天皇賞は、古くからの伝統を継承した「芝3200m」という長丁場で、古馬同士が競い合うレースであるがゆえに、かつては古馬戦の最高峰レースとして、その勝者が称えられたものだった。


だが、世代最強馬同士が覇権を競い合ったのは、テイエムオペラオーメイショウドトウナリタトップロードを従えて連覇し(2001年)、マンハッタンカフェジャングルポケットを退けた(2002年)あたりまでで、その後のレースは、勝ち馬の格的にも、勝負的にも“一流”というには寂しい状況が続いている。


ディープインパクトが参戦した2006年は、2着以降がパッとしない感じ*1だったし、混戦の末、結果的にはメイショウサムソンが2冠馬の貫録を示した2007年にしても、“ドングリの背比べ”的な印象が強いレースだった。


そして、その後の2年は、G1勝利どころか、出走自体が初めて、というアドマイヤジュピタマイネルキッツが戴冠し*2、今年に至っては、G1を勝ったことのある馬が出走さえしてこない、という状況。


レース当日の朝刊で、日経紙は、「出走馬のプレレーティングで最高値だったのが、重賞未勝利のジャガーメイルだった」という事実を伝えた上で、

「G1で通用する目安は「115」とされ、今回の18頭で昨年以降、115以上を出したのは、同馬のほかに117のマイネルキッツ、115のフォゲッタブルエアシェイディと計4頭。いかに小粒な構成かを物語る。」
「中距離型で3000メートル級の経験が少ないジャガーメールやエアシェイディが勝つようなら、レースの存在意義が問われる事態といえる。」
日本経済新聞2010年5月2日付朝刊・第25面)

というコメントを載せていたのだが、懸念された通りジャガーメイルが勝ってしまったことで、ますますこのレースの価値は低く評価されることになってしまうだろう。


いろんなところで言われているように、国際標準の距離(マイル〜2000m前後)に合わせてローテーションを組む馬が主流になったことが、こういう事態を引き起こしているのは間違いないのだが*3、“春天”が“一流古馬”と呼ばれるのに不可欠なタイトルだった時代を知っている人間としては、それにしても・・・という思いがある。


今年の出走馬なんて、言うなれば、「法科大学院への進学が主流路線になったがゆえに、かつてに比べれば受験者層が薄くなった」などと陰口を叩かれているここ1,2年の旧司法試験の受験生みたいなもの*4(旧試験の受験者は、最盛期の3分の1以下(約16000人)になってしまったわけで(それでも合格者数との比率で見れば多いと言われるが)、かつて資格試験の最高峰と言われた姿は見る影もない)。


仕掛けどころが難しい淀のコース*5を2周もして、3000m以上も走って、しかも最後の直線である程度切れる脚を使わないと勝てない、という、本質的に勝つのが難しいレースであるにもかかわらず*6、勝者があまり評価されないところや、高齢の実力馬(者)が多い*7ところも何となく旧試に似ている(苦笑)。


あれこれ言われても、この日勝った馬(あるいは上位に食い込んだ馬)が、この先のレース(特に別路線組と交わりやすい宝塚記念秋の天皇賞あたりで)で結果を残せば、“春の盾”の価値が必然的に再評価されることになるわけで、ジャガーメイルマイネルキッツ、そしてまさかの3着馬・メイショウドンタク*8には、今後の確変的活躍を期待したいところなのだが、果たしてどうなるか*9


旧試験組の今後と合わせて見守っていくことにしようか、と思っている。

*1:ある意味、ディープにとっては古馬になってから一番楽なG1レースだったように思う。

*2:しかもその後はいまいちぱっとしないレース続き。

*3:JRAが組むレース番組の体系もそれに合わせて短距離・中距離中心になっているから、長距離適性のある馬がオープンクラスにまで勝ち上がること自体が難しくなっている。

*4:かなり自虐的ではあるが。

*5:他の競馬場と異なり、大きな傾斜が3角〜4角付近に仕掛けられているので、必然的にそのあたり(特に下り坂)に来ると、ペースが乱れがちになる。

*6:実際、今年のレースも結構タフなレースではあったと思う。

*7:今年は10歳のゴールデンメインを筆頭に、9歳、8歳が各1頭、7歳が3頭。勝ったジャガーメイルだって6歳(旧7歳)だから、若くはない。

*8:重賞で3着内に食い込んだ実績はなく、光る戦績としては09年若駒Sの2着(それもアンライバルドにだいぶ離された2着)くらいしかない馬だ。

*9:馬券を外した人間としては、せめてフォゲッタブルあたりが勝っといてくれれば、この先もう少し楽しみが持てたのに・・・という悪態の一つも付きたくなる。

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