どこまでが「会計士」の仕事なのか?

日経紙の法務面に「特命会計士 活躍」という華やかな記事が載っていた*1

「会計士のノウハウと経験」を活用して、企業不祥事に関する情報を収集し、「『デジタル・フォレンジック』と呼ばれるハイテク手法」を用いて分析する、という会計士(特命会計士)が、最近企業側に重宝されており、内部統制強化の動きと相まって依頼が急増している、という記事なのだが・・・。


確かに、会計帳簿をいじるタイプの不正であれば、公認会計士に帳簿とお金・商品の出入りを突き合わせてもらって、真相を解明する、というのは効果的なやり方だと思う。

ただ、今回の記事で取り上げられている「秘密情報を漏えいした社員への調査」といった類のものはどうか?

監査法人系の会社に研修等を依頼すると、情報管理について法律解説を交えた分厚い講義をしてくれることも多いから、“それも職域”というのが業界の意識なのかもしれないが、

「我々はあなたを訴えなければなりません。ただ、核心を話してくれれば情状酌量の余地もあります」

といって、当該社員を「調査」するのが、会計士の職分に属する仕事かというと、首を傾げたくなる。

また、記事では、「会計士のノウハウと経験」から、

「相手の性格を探り、すべてを話した方が得策だと説得する」
「相手に共感し信頼を得たうえで自白に導く」

といった、「心理術を駆使した手法」を会計士が用いている、といったことなども紹介しているのだが、これにしたって、会社とのお付き合いが上品なものになりがちな大手監査法人系の会計士たちが、果たしてどこまでノウハウを持っているのか、疑問の残るところだろう*2

別に自分とて、こういった「特命会計士」が、“弁護士の職域を犯している!”などと格式ばったことを言うつもりはないのだが、依頼する側としては、見かけの華やかさに惑わされることなく、「適材適所」の発想で依頼しないといけないなぁ・・・と思う次第である。

そして、本来、対人的な「調査」能力を一番有していないといけない資格業の方々に、もっと“能力”をPRしていただければなお良い、と思っている。

*1:日本経済新聞2011年3月7日付け朝刊・第17面。

*2:「心理術」なんて、机上でいくら学んだところで実戦を積まないとほとんど役に立たないのであって、“嘘をつくことも厭わないような有象無象の依頼者”と常に向き合わなければならない街の士業の人々ならまだしも、今回のコラムに登場するような人々が果たしてノウハウを有しているか、といえばちょっと怪しいところはある。

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