「企業財務会計士」導入見送り

公認会計士の“就職浪人対策”として、一部で導入が期待されていた「企業財務会計士」制度が、「審議中に法案から削除される」という異例の展開を経てお蔵入りすることになった。

元々企業側の人材ストックが厚く、「(監査証明権限という)特権を持たない専門家」の養成ニーズが高いとはいえない会計業界に、“就職浪人対策”という極めて消極的な理由で新しい資格を設けたところで、機能するかどうかは怪しいところだったから*1、出された結論自体にさほどの違和感はない。

だが、

「ニーズがないのに資格を作れば、一生懸命勉強する人がかわいそう」

という受け容れ易い理由の裏には、もっとどろどろした話もあるようだ。

「加えて微妙な業際問題が根っこにある。地方で企業のコンサルティングなどを手掛ける税理士事務所にとって、新資格の保有者は競合相手になりうる。最終案発表後は、地元の税理士らが野党への働き掛けを加速。いったん賛成した日本公認会計士協会日本経団連も内部で消極論が勢いを増した。」(日本経済新聞2011年4月22日付け朝刊・第4面)

士業の業界というのは不思議なもので、受験生的には“最上位”と位置付けられるサムライの業界よりも、下位に位置づけられる業界の方が、政治力は圧倒的に強い*2

政局絡みの法案ならともかく、本来結論が出れば淡々と審議されるはずのこの種の話で、「一度政府が決定して国会にまで提出した案がひっくり返される」という滅多にないような展開に至ってしまった理由が、前向きな検討によって生じたものではなく、ことを「政治」問題化し、必要以上のネガティブキャンペーンを展開した一部の勢力の存在にあったのだとしたら、何とも皮肉なものだと思う*3

既得権益で凝り固まった士業会に、机上で描いた“競争原理”を単純に持ち込もうとしたところで所詮限界はある*4、というのは分かり切っていることではあるのだけれど、「競争がなければ進歩もない」というのも一つの真実ではあるわけで*5、ただ手をこまねいているだけではいけないのではないかな・・・というのが、自分の率直な思いである。

*1:世界に通用する「会計人材」を育てたい、という目標を達成したいのであれば、企業の財務部門を担う人材がより流動化しやすくするための手立てを講じるべきだろう、と思う。これは法務も同じ。

*2:「政治=数の力」という単純な理屈に加えて、政治活動に対するモチベーションの違いも大きいような気がする。

*3:弁護士増員に反対する先生方の中にも、“この手があったか”と内心ほくそ笑んでいる人は多いのではなかろうか(苦笑)。

*4:弁護士のように“即独”ができない会計業界の場合はなおさら。

*5:実際、新たな“サムライ”の登場を排除した士業の人々が、“理想的なサービス”を提供しえているか、というと、そこには若干の疑問符も付く。