エスタブリッシュメントとの訣別

以前からツイッター等で、三木谷社長経団連退会をほのめかしていた楽天だが、ついに会社としても決断を下したようだ。

楽天は23日、経団連へ退会届を同日付で提出したことを明らかにした。「方向性の違い」(三木谷浩史社長)が理由としている。電力会社の発送電分離に慎重な姿勢を示している経団連に、決別した形だ。」(日本経済新聞2011年6月24日付け朝刊・第5面)

たかが一経済団体。
されど、それは、この国のエスタブリッシュメントと言えるような企業が軒並み名前を連ねる“産業界の代表”的団体でもあるわけで、歴史の浅い会社の場合、「経団連に入会した」とか「自社の経営者が経団連の重要な役職に就いた」ということが、自らの存在が世の中に認められたことを示す一つの象徴と受け止めることも多い。

楽天とて、2004年11月にこの団体に加入した時は、社内にそれなりの高揚感があったことだろう。

だが、エスタブリッシュメントとしての伝統と存在の重みは、新興企業にとっては面倒なものであるのも確かだ。

いろいろなところで人的物的負担を求められる割に、組織としての意見は、昔っからいる古臭い業界の意見によって支配される。

会議等の場に顔を出せば、一応それなりに扱ってはもらえるものの、古い企業の経営者はもちろん、下手すれば事務局の人間からも“新参者”的な視線を浴びなければならない。

サラリーマン社長とは異なり、自らの手で会社を、そして業界そのものを立ち上げ、道を切り開いてきた新進気鋭の経営者にとって、そんな経験は愉快なものではないだろう、と想像する*1

今回、三木谷社長は、「電力業界を保護しようとする姿勢」を、退会の理由に挙げた。

しかし、それはあくまで“時流に合わせた”だけで、本当の理由は他のところにもたくさんあったのではなかろうか。

楽天と言えば、インターネットによる医薬品販売規制に反対するため、大がかりな活動を展開していたのが記憶に新しいが、この問題にしても、電子商取引全般にしても、経団連が積極的に同社の活動をバックアップできていたかどうかは疑わしい*2


退会することによる有形無形のハレーションは、これからじわじわと出てくる可能性があるし、下手をするとホリエモンの二の舞になる可能性だってないとは言えない*3

でも、今回の楽天の「公開退会」という決断が、現在の経団連の在り方に疑問を感じている多くの会社、経営者に対して一つの刺激を与えたこともまた事実なわけで、楽天がそれでもなお、従来どおりの成長を遂げ、社会的責任を果たす会社として世の中に受け入れられることになれば、それは「時代が変わった」ということを象徴する一つの美しい事例になることだろう。

ゆえに、自分としては、今回乃三木谷社長の勇気ある決断を歓迎するとともに、今後同じような、新しい流れが続いていくことを密かに期待している。

*1:たぶんホリエモンとかだったら、加入しようなんて気すらなかったはずだ。2004年の楽天経団連加入時も、エスタブリッシュな世界と徹底的に喧嘩するほかない堀江社長と、そこに取り入ることができる三木谷社長のキャラクターの違いを示す典型的事例として、このエピソードを取り上げるメディアは多かった。

*2:そもそも会員企業に、今や老舗となった既存の大手小売企業が多数入っている以上、どうしても経団連としての意見を“楽天一色”に持っていくのは難しいわけで、できることがあるとすれば、政府の規制を後押しするような意見書を出さないように働きかけることくらいだろう。

*3:同じ産業界に応援団が少ない経営者、企業、というのは、当局にもいろいろと狙われやすいのは間違いない。そもそもこの会社、取引パートナーとしての評判は・・・

google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html