たまたま付けた地上波の野球中継で恐ろしいものを見てしまった。
それが何か、っていえば、ドラゴンズのベンチに鎮座する落合博満監督その人。
いつもなら、自称“日本の真ん中”のコアラ球団なんぞには大した興味はなく、今年のCSの最終ステージも、専らの敵役の燕軍団の方にシンパシーを抱きながら、結果だけ眺めるくらいだった。
だが、珍しい地上波の野球中継、ということもあって、チャンネルをそのままにしたのが運の尽き。
落合という監督の凄みをまざまざとこの目に焼き付けることになってしまった。
それがどんなシーンかといえば・・・
スワローズのマウンドで力投を続ける館山投手を相手に、一死から1番・荒木選手が四球で出塁。
続くは2番の井端弘和選手。
CSに入って多少当たりが出ているとはいえ、井端は、シーズン中の打率2割3分台。長打は僅か11本という選手である*1。
加えて、自軍のエース・吉見投手が万全のピッチングを続けていて、一点でも取れば相当有利な試合展開になる状況だったことを考えると、当然送りバントのサインが出て然るべき場面*2。
ところが、なぜかバントの素振りはなく、荒木選手の足で揺さぶりながら強行の構え。
解説席からもいぶかしがるような声が出始めたその瞬間、振りぬいたバット一閃、レフトスタンドに突き刺さる2ランホームラン・・・。
シーズン中、というか、過去2シーズン遡っても、ホームランを1本しか打っていない選手が、こんなところで打つなんて・・・と、その瞬間絶望のどん底に突き落とされた燕ファンは全国数万人規模でいたことだろう。
そして次の瞬間、切り替わったカメラの期待を裏切るかのように、ベンチで微動だにしない落合監督。微かに笑っているのかどうなのか、こんなサプライズまで見越しての強硬策だったのかどうなのか・・・。
浅薄なパフォーマンスが幅を利かせがちなこの世の中で、この期に及んでもなお自分のスタイルを崩さず、底の浅いメディア(&その後ろにいる視聴者)には一切何も悟らせない。
慄然とするような光景であった。
結局、その後、予定調和的な結末となってセ・リーグが終幕したことを速報で確認した後に、スコアシートを眺めて見たら、この日のドラゴンズのヒットは僅か3本。スワローズ投手陣の必死の粘りもあって、初回を除きほぼノーチャンスだった試合で、一発で試合を決めさせてしまったあの采配*3がいかに大きなものだったのか、ということが改めて分かる*4。
元々、退団の経緯からして、落合監督が“花道”をどう飾るか、に興味はあったのだが*5、退団が決まってからの監督の神がかりぶりは、自分のような野暮なファンが予測可能な域をもはや超えてしまっているのかもしれない。
幸か不幸か、迎え撃つ相手は、自分がパ・リーグ6チームの中で唯一憎んでやまない金満球団、ということもあり、今年の日本シリーズは、久々に一方に肩入れして熱い視線を向ける・・・そんなことになりそうである。