金本引退。

昨年、連続試合出場が途切れた時から、いつ「引退」の話が出てくるのだろう・・・と思っていたのだが、とうとう2012年シーズンが“鉄人”の最終章となった。

「1492試合連続フルイニング出場の世界記録を持つプロ野球阪神金本知憲外野手(44)が12日、兵庫県西宮市内で記者会見し、今季限りでの現役引退を発表した。右肩負傷から思うように復調せず、自身の限界を感じていたことに加え、「若手に切り替わる中で、いいときのパフォーマンスを出せない自分がいるのも、肩身が狭い」と決断の理由を語った。」(日本経済新聞2012年9月13日付け朝刊・第37面)

タイガースファンにとって、「金本」という選手は特別な存在であり、かつ、複雑な思いを抱かせる選手でもある。

広島での11シーズン、暗黒期のタイガースにとっては憎き悪役だったこの選手が、星野仙一監督率いる2003年のチームに移籍してきたことが、“負け犬“集団の歴史を変えたのは間違いない。

2003年は、目立つ数字こそ残していないものの*1、この年加入した下柳投手、伊良部投手らと並んで、チームの空気を一変させた立役者の一人だったし、40本、125打点、という生涯最高の成績を残してMVPに輝いた2005年のシーズンなどは、まさに“金本なくして・・・”という感が強かった。

それまで、「人気はあるけどプロ意識が足りないのでは・・・?」という選手が決して少なくなかった阪神球団が、曲がりなりにも03年の優勝から10年近くの間、上位争いができるチーム状態を維持し続けることができたのは、金本選手が周囲に与えた成績以上の精神的影響が大きかった、という分析もあるところだし、それも間違ってはいないのだろう。

ただ・・・あと一歩のところで優勝を逃した2008年のシーズン、100打点超でベストナインを獲得したのを最後に、金本選手の少なくとも「プレイヤーとしての」輝きは消えた。

翌年(2009年)は残した数字以上に、チャンスでの凡退が目立ち、真弓監督1年目の足を引っ張る形になった。
さらに、翌2010年は、開幕前に負った肩の重傷で、到底守備に付けるような状況ではないのに、当時まだ継続していた「連続フルイニング出場」のために、しばらく試合に使われ続け、目を覆いたくなるような惨状に・・・。
しかも、連続フルイニングの記録ストップ後も、「連続試合出場」のために代打で無理くりに試合に出し続ける、という晩年の衣笠選手もびっくりの起用が、目の肥えたファンの怒りを誘う事態になってしまった*2

金本選手に対し、戦力としての「見切り」を早目に付けられなかった首脳陣に最大の責任があるとはいえ、金本選手の側でも、自分の状態を考えれば、「出場」にこだわらず早目に休養に入る手はあっただろう。
純粋なファンとしては、肩の回復までにもう少し時間をかければ、チームに迷惑をかけずに、もう少し選手寿命を延ばすこともできたのではないか・・・という思いもあり、その辺はとても残念だ。

だが、結果は結果。

上の記事に掲載された、

「この3年間は惨めというか自分がみっともなくて、かわいそうで。こんな苦しい人生があるのかという3年間だった。」

という会見でのフレーズを読んでしまうと、この数シーズンの“背信”を今さら責めるわけにもいかない。

後は、今シーズンの残された18試合の中で、少しでも記録を積み重ねて、堂々と球界の歴史に名前を残してくれることを願うのみである。

*1:打撃成績でいえば、首位打者の今岡選手や100打点を挙げたアリアス選手の方が遥かに上で、このシーズンの金本選手はベストナインにすら選ばれていない。

*2:さすがに、翌年の開幕早々に、「俊介の盗塁死」という確信犯的アクシデントで連続出場記録は止まり、この盗塁のサインを出したことが、真弓監督が3シーズンの間に残した唯一の功績、と言われているが、それにしてももっと早く何とかできなかったのか、と思う。