投票行って外食、それがこの国の幸福。

今年の参議院選挙も終わった。

ここ数か月の情勢を振り返るなら、現首相の下で安定した政権運営が続く一方で対立軸を失った野党陣営は迷走中。
欧州での戦争勃発とそれに伴う経済混乱や、未だ評価が定まらない新型コロナへの対応、といった課題はあるものの、いずれも外在的要因によるものだから、国内で画期的な政策を打ち出して主導して・・・というわけにはいかない上に、過激な方向に走ることなく安定した対応を続けている今の政権を見れば、ますます「変化」を求める気は失せる。

・・・ということで、何が争点かもはっきりしないまま(そうはいっても任期満了だから仕方なく、という雰囲気の下)、ぼんやりと選挙戦に突入したのが今回の参院選だったように思うし、実際、街中を歩いても、ここ数回の選挙以上にムードとしては冷めていた。

最近は、投票率の低下への危機感からか、街角のポスター・サイネージ広告からSNSまで、政府広報からSNSの親切な(?)説教者まで、選挙が近くなると「投票行け行け!」というプッシュが盛んに入るようになっているし、それ自体を悪い、というつもりはないのだが、「別に今、政治に何か期待しないといけないほど困ってない」「特に変化が必要だとも思っていない」という人々にとっては、「投票に行かない」というのも立派な選択肢の一つだと自分は思っている*1

かくいう自分も、今回の選挙に関して何ら期待するところはなかった。

そもそも、最近いろんなところがやり始めた「公約」をベースとした各政党との相性度診断的なものをやっても、ぴたりと整合するような政党は皆無で、良くてシンクロ率40%程度、しかも上位に来るのがまぁまぁ極端な政党ばかり、というのが、ここ数回の国政選挙に際しての自分の立ち位置だったりするから、投票所に行ったところで投票先に困ってしまうのが実態だったりもする。

だから、世の中の約48%の人々と同様、自分もスルーと決め込む、という選択肢はあり得たのだが、それでも一応足を運んだのは、

「投票行って 外食するんだ」

という懐かしいフレーズ*2を思い出して、家族で晩飯食べに行くついでに・・・というのが8割くらい。

そして残りの2割は、6年前、慌ただしさにかまけて投票に行くことすら忘れてて*3、後で見たら、「なんでこいつが!」というタレント候補が当選してしまっていたことに気づいた時の後悔を思い出したから、だろうか。

残念なことに、6年前に1人だった某党のタレント候補は今回2人になり、支持者が適切なバックグラウンドのある候補者に投票する機会すら失われた*4

他の党を見れば、まだまだ東京の選挙区にもふさわしい人材は残っているとは思うし、かの党だって全国すべてで同じような愚を犯しているわけではない*5

ただ、ネット選挙解禁で有権者が候補者や各党の政策にダイレクトに触れる機会が増えることが期待されていたにもかかわらず、現実には候補者の”タレント化”はより進み、地道に政策を訴え続けている政党よりSNSで過激なムーブを起こした政党の方が話題になってしまう、という状況もよりエスカレートしただけだった*6

ということで、確定結果を見る前からため息しか出てこなかったりするわけだが、それでも投票後に美味い飯を食い、酒が飲めたのだから、この週末も良い週末。そして、半分近い有権者が政治に思いを託さなくても、普通に過ごせる日常があるこの国がどれほど素晴らしい国か、ということを改めてかみしめつつ、明日以降、また湧いて出てくるであろう様々な下世話な選挙ネタを、シュールな気分で眺めていこうと思っている。

*1:世界を見回せば、「投票に行かない自由」を享受できない国も多数存在していることに気づく。そしてそういう国で何が起きているか、ということを考えると、何が何でも投票所に足を運ばせる方向に圧力をかける社会になる方が、よほど反民主主義的で危うい事態だと自分は思う。

*2:モーニング娘。の「ザ☆ピース」より。

*3:正確に言うと、日本を離れている週末に投票日がある、ということに直前まで気づかず、期日前投票にも行き損ねた、ということだったと記憶している。

*4:もともとここ数年は地方選挙も含めて一切投票していない党とはいえ、こういうことをされてしまうと、もはや二度と票を投じる気にはなれない。

*5:だからこそ、東京に住む者としてはなおさら憤りを感じるのだが。

*6:ついでに言えば、世界中でいろいろと叩かれて懲りているはずなのに、某メタなSNSがサジェストする記事のバイアスのかかりっぷりは想像を超えていて、これまたいかんな・・・と思わざるを得なかった。

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