大王製紙のアクションの真意はどこに?

昨年の“若旦那の使いこみ”発覚以降、まるで良い話を聞かない大王製紙
創業家と経営サイドの分裂は深刻化して、報道を見る限りでは関係修復のメドは依然立っていないように見える。

今考えると、第三者委員会のあまりにシンプルな結論の調査報告書がこの災いを暗示していたのかもしれないが、今さらそんなことを言っても後の祭りなわけで、このまま事態が推移したら、現経営陣も創業家も共倒れになるのではないか・・・ということすら、懸念されるところ。

そんな中、大王製紙が同業他社を特許権侵害で訴える、というニュースが飛び込んできた。

「保湿ティッシュの製造方法に関する特許を侵害されたとして、家庭紙最大手の大王製紙日本製紙クレシアに訴訟を起こしていたことが、20日までにわかった。製造や販売の中止を訴えているが、クレシアは「侵害の事実はない」と棄却を求めている。」(日本経済新聞2011年4月21日付け朝刊・第13面)

競争の激しい家庭用ティッシュペーパー市場のこと、各メーカーとも、少しでも良質の肌触りの製品を、少しでも低コストで生産するために血眼になっている、と思われるだけに、今のところまだ最大手の大王製紙としては、類似商品*1を少しでも叩いておきたい、という思惑が働いたのかもしれない。

だが、報道当日に、日本製紙クレシアがHPに掲載している内容は、大王製紙側の言い分の完全否定*2。争っている状況下で、安易に相手を立てるようなことは言えない、ということを差し引いて考えても、売られた喧嘩には徹底的に戦う、という姿勢が鮮明に出ているように思う。

そもそも、同じ業界内で、相当数の特許を保有している会社同士が争いに突入する、ということは、仁義なき長い戦いに足を踏み入れてしまうリスクもその分高くなることを意味するわけで、それを踏まえれば、訴える側としては、十分慎重を期して、引き金を引くタイミングを図る必要もあったはず。

にもかかわらず、このタイミングでライバル会社に対して喧嘩を吹っ掛けた、というのは、相当綿密な事前検討に裏付けられた結果なのか、それとも、創業家側の支配企業が本体からの独立性を強めていく状況で、何とか事態を打開したいという思いもあって上から降ってきた話によるものなのか・・・*3、イマイチ良く分からないところは多い*4

また、海の向こうのコダックの例を挙げるまでもなく、下り坂の会社ほど、本業から離れた特許その他の権利の行使に躍起になり、経営資源を浪費している間に、会社そのものが傾いてしまう・・・という傾向があるのも事実。

一番良いのは、本件を長引かせることなく、早目に決着を付ける方向で手じまいにしてしまうことだと思うのだが、果たしてどうなるか。筆者自身も「エリエール」を長年愛用してきた者であるだけに、この紛争が泥沼化することなく、早期に収拾することを、ただ願うのみである。

*1:大王製紙は「エリエールプラスウォーター」、日本製紙は「クリネックスアクアヴェール」という商品名で、ネットで調べる限り、価格的にもほぼ同等である。このほかに競合製品としては王子製紙の「ネピア」等もあるが、各社製品でどの辺が異なるのかは、正直よく分からないところもある。

*2:http://www.crecia.co.jp/whatsnew/120420_infomation/120420news.pdf

*3:エリエール部門は、元々創業家の影響力が強い部門だったようで、製造についても、多くは先般の株主総会で創業者の意を汲んだ役員に代わったような会社が担当している部門だけになおさら・・・?

*4:当然のことながら、もし、「後者」のポリシーであっさりとGoサインを出してしまうようなことがあれば、その後、訴えを起こした側にも、いろいろと災いが生じることになってしまうだろう。