既にこのブログでも紹介してきた姫路独協大法科大学院*1や、その後の大宮法科大学院に続き、明治学院大学の法科大学院も募集を停止する、というニュースが先週飛び込んできた。
最初から「バブルが去れば厳しいだろう」と思われていた姫独や、桐蔭横浜との統合という形で“名誉ある撤退”をした大宮とは異なり、明治学院の場合は、大学のブランドイメージが悪いわけではないし、元々学部課程にも「法学部」の伝統がある学校だっただけに、関係者にとっての衝撃はより大きいのではないかと思う。
そして、そんなタイミングを見計らってか、日経紙に「法科大学院 撤退のドミノ」と題するコラムが掲載された*2。
曰く、
適性試験の志願者数は8年間で5分の1になり、明治学院大学をはじめ、多くの法科大学院が入学者集めに四苦八苦している。
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入学者減により授業料収入も減少し、大学側には大きな打撃となった。
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司法試験合格率の低迷により志願者の人気が急落し、その結果、法科大学院の経営が悪化する、という負の連鎖になっている。
という分析で、このあたりは、いつも言われていることと何ら変わりはないのだが、
「大学の誤算は、大学や法学部のブランド維持のため、法科大学院を必要と考えたことだ。教員は引き抜きで帳尻を合わせ、不十分な体制で多数が参入した。学生獲得のため、多額の奨学金を提供したが、司法試験合格率が期待を下回った結果、『法学部志望者まで減りつつある』(日弁連)」
と、大学側に対しても厳しい指摘をしているあたりが、やや特徴的と言えるだろうか。
そして、結論としては、
「米国のロースクールは1000人以上の学生を抱える大規模校が主流だ。韓国は法科大学院の設置を政府が絞り込み、8割超の司法試験合格率を達成した。日本でも統廃合を含む法科大学院の見直しは避けられない。」
と、今後の補助金削減等を通じた「間引き」政策に期待する、というトーンになっているのも、また日経らしいと言える。
個人的な感想としては、確かに今の法科大学院の数は多すぎるし、一定の「間引き」は必要だと思う一方で、「法科大学院」と「新司法試験」に染みついた悪いイメージは、そうそう簡単に払拭されるものではないし、何より、「司法試験に合格してからの展望が開けない」というのが、今の“不人気”の最大の要因だと思うだけに*3、今さら法科大学院の数が減ったところで、根本的な問題の解決にはならないだろう、という思いもある。
法学部教育の実績がない“根無しロー”は、さっさと撤退した方が、大学、学生両方にとって良いと思うのだが、地域密着型の法科大学院のように、消えては困る学校もあるし、あまりに法科大学院の定員を減らしすぎて、「法律をしっかり勉強したい人」にとっての間口を狭めてしまっても、困ったことになるわけで・・・。
それよりはむしろ、“資格のためのステップ”ではなく、純粋な“学び場”としての法科大学院の魅力を地道にアピールすることが、秩序なきドミノ崩壊を食い止める最善の策だと思うのだけれど、そういった声を届ける機会がなかなかない、というのは、残念な限りである。
*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20100528/1275787272
*3:「合格率」の問題は、既に受験者の層の厚い世代が合格/受験資格喪失した今となっては、大した問題ではない(きちんとしたローに入ってきちんと勉強すれば、3回以内でほぼ確実に合格できるレベルの試験になっている)と自分は思っているのだけれど。