負のスパイラル

前々から話題になっていた法科大学院の定員削減問題だが、この日の日経紙に、ついに以下のような記事が掲載されることになった。

「全国の法科大学院74校の2010年度の募集人員が計4904人と前年度から861人減り制度導入後に初めて5000人台を下回ったことが22日、文部科学省の調査で分かった。54校が09年度の定員より減らしたという。」
「調査によると、東大が09年度より60人減らしたのをはじめ、京大が40人減、明治大が30人減など。中央大、早稲田大、慶応大、関西大など20校は減らさなかったが、大半は10年度以前に定員を見直したか、11年度の定員を見直す予定と回答している。」(日本経済新聞2010年1月23日付朝刊・第34面)

2010年度の法科大学院入試に関する東大当局のリリース(http://www.j.u-tokyo.ac.jp/sl-1/news/20091211.html)を見ると、合格者は未修73名、既修165名の合計238名となっており、確かに減っているのが良く分かる。


大学関係者にしてみれば、学生数を減らすことによって、学生の指導やら答案の採点やら、といった面倒な手間を多少なりとも減らすことができるし、新司法試験の見かけ上の合格率の数字も改善されるから、これでいい、ということになるのかもしれないが、自分がこのような「入り口」をさらに狭める方向での“改善”に疑義を抱いているのは、当ブログでも繰り返し述べているとおりなわけで・・・*1


古い試験で枠が「1500人」まで拡大していた頃は、あたかも、黄金に群がる開拓者のように司法試験を目指す受験者があちこちから湧いてきて、法学部の学生はもちろん、相当の会社で将来を期待されていたような社会人まで退職して夢を追っていたものだ*2


そして、法科大学院ができて間もない頃にも、まだそのころの熱は残っていた*3


だが、今や熱は冷め、加えて、今回の各校の定員削減によって、「司法試験を受験する資格が与えられる人」の数まで絞り込まれようとしている。


たとえ、最終的に合格を果たせなくても、2年なり5年なり(あるいはそれ以上の期間)、司法試験を目指して頑張っていた人々が、今、広いフィールドにわたって世の中を支えている*4ことを考えると、かつての受験者数の10分の1しか試験を受けるチャンスが与えられない状況が、いいことなのかどうかは疑わしい。


しかも、それだけ絞り込まれた上で、なおも「犠牲者」が出るという実態は変わらないのだ。


間口が狭まれば人々の関心は薄まる。そして、関心が薄まれば、受験者の数だけでなく質の方にも、いずれ影響は及んでくる*5


この不景気とそれに伴う深刻な就職難の状況を考えれば、2010年、2011年あたりまでは、法科大学院に行きたいと思う学生・社会人のニーズもそれなりに掘り起こすことができるだろうが*6、それ以後果たしてどうなるか。


今の方向性でそのまま進んでいくのであれば、自分は悲観的にならざるを得ないのだが・・・。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20090901/1252158450の記事、及びそのリンク先参照。

*2:ピーク時の出願者は実に50000人を超えていた。つい7年ほど前の話だ。

*3:だからこそ、相当のキャリアを積んでいたような社会人まで、進路を変えて出来立ての学舎へと向かっていった。

*4:良く考えると、今の与党の最高実力者も、自民党の総裁も、そのカテゴリーに属する人々である(後者は最終的に合格されているが・・・)(笑)。

*5:それまでの受験者のうち、“上澄み”だけが残る、という想定に立てば、質の心配は本来しなくてよいはずだが、実際にはそうはならないだろうと思う。昭和、平成初期年代の「狭き門」だった時代の司法試験を、多くの優秀な学生が敬遠したのと同じような現象がこれから再び起こることになるのではないか、と想像している。

*6:現に、東大に関しては、H20の受験者数914人に対し、H21の入試では受験者数954人と、僅かながら増加に転じている。