あっという間の大逆転。

今年の2月に地裁判決が出た時に、「意外な判決だなぁ・・・」とコメントした*1のが記憶に新しい、「グリー対DeNA/釣りゲーム著作権侵害事件」だが、自分が第一審判決への細かいコメントをブログに載せる機会を逸し続けている間に、あっという間に控訴審の判決が出てしまった。

「携帯電話向け釣りゲームを巡って、ゲームサイト運営のグリーが同業のディ・エヌ・エー(DeNA)を訴えた裁判で、知的財産高裁は8日、著作権侵害を認めた一審判決を取り消し、グリーの請求を棄却する逆転判決を言い渡した。知財高裁は両社ゲームの共通部分について「ありふれた表現にすぎない」と判断した。グリー側は同日、上告した。」
日本経済新聞2012年8月9日付け朝刊・第3面)

9日時点で、まだ判決文がアップされていない*2ので、とりあえず記事に引用されている内容から推察すると、知財高裁は、

(1)両作品に共通部分はあるが、表現上の創作性がない。
(2)(その他の部分については?)具体的な表現は異なり、全体から受ける印象が異なる。
(3)操作手順については、実際の釣り人の行動に沿って構成したもので、ありふれた表現に過ぎない。

と、いわゆる典型的な非侵害認定手法に則って、結論をひっくり返したようだ。

元々、表現の幅が決して広いとは言えない携帯電話向けゲーム(それも現実に行われているイベントをゲーム化したタイプのもの)について、侵害を認めた地裁判決が、かなり大胆なものだったのは事実だし、その後一審の判決文を読んで、「著作権法で保護される「表現」と、保護されない「アイデア」の区別を、この判決はどこで行っているのだろう?」という思いを強くしただけに、今回の控訴審の結論自体には違和感はないのだけれど、これだけの大事件で、何の迷いもなく(?)、僅か半年で結論をひっくり返してしまうとは*3、さすが高部コート(笑)。

グリーとしては、当然、

「到底承服できない判決で、最高裁の判断を仰ぐ予定だ。」(同上)

というほかないのだろうが*4、本件に上告審に馴染むような法的論点があるか、と言われれば、かなり微妙なところで、事実上決着は付いた、と言わざるを得ないのではないかと思われる。

奇しくも、第一審の判決後、業界を取り巻く状況は激変し、ソーシャルゲーム業界を支えていかねばならない原告・被告両社が、不毛な争いをしている暇はないようにも思えるだけに、第三者的には、さっさと和解で矛を収めてしまうのが得策だと思うのであるが、果たしてどうなるか・・・*5

上手に和解して、

「お互いパクリのない健全な業界を作ります!」

と高らかに宣言した方が、業界全体のイメージアップにも、両社の業績維持にもつながるのではないかと思うのだけれど。

*1:http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20120224/1330271797

*2:その後10日の夕方に掲載された模様である(11日追記)。

*3:おそらく1回結審のパターンだと思われるし、新証拠が大量に出されたとも考えにくいのだが・・・

*4:これに対し、記事の中で紹介されているTMIの升本喜郎弁護士の「先行者利益を害することは業界の発展の妨げにもなりかねないことも考慮すべき」というコメントは良く分からない。そもそも、先行者利益の保護は、著作権法とは全く関係ない話だし、釣りゲームに関してグリーを「先行者」と呼ぶほどの市場実態もないように思う。裁判記事の隣に掲載されている関連記事のトーンなどを見ると、このコメントは升本弁護士の発言、というより、記者の主観をもとに弁護士の言葉を拾って構成したもの、と理解する方が妥当であるようにも思われる。

*5:一審判決が出た時に、「一審判決の内容も意外だったが、それ以上に、グリーが提訴したこと&最後まで和解しなかったことが一番意外だよ。」的な業界関係者のコメントを聞いたことがある。社内的なコントロールや、代理人との関係等々から、最終的に引くに引けない状況に追い込まれてしまったのかもしれないが、個人的には早めに手を引くべき“戦”ではないかと思っている。

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